研究課題/領域番号 |
13F03915
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
塚田 孝 大阪市立大学, 文学研究科, 教授
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研究分担者 |
PORTER John 大阪市立大学, 文学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 貧困 / 救済 / 近代大阪 / 非人 / 下層社会 / 勧進 / 身分制の解体 / 都市 |
研究概要 |
本研究では、近代大阪の都市下層社会を分析対象としたポーターの博士論文の成果の上に立って、近世大坂の公認非人集団である垣外仲間の解体過程を段階的に捉えるとともに、明治初期大阪の救貧体制の成立と展開を解明することを目標とした。この作業を実現するため、10月から二つの局面より研究を進めた。第一には、昨年に調査した大阪市立中央図書館所蔵の救貧関連史料の考察を継続しながら、垣外仲間の解体過程と近代大阪の都市下層社会の形成プロセスとの実質的関連性や垣外仲間の旧構成員の都市社会への再統合の実態という二つの課題についての分析を深めようとした。3月末に、ポーターはその作業の結果を英語圏の最大の東洋学学会であるAssociation for Asian Studiesの年次大会で報告するとともに、その報告のベ一スとなる論文を塚田孝・佐賀朝・八木滋編『近世身分社会の比較史―法と社会の視点から―(大阪市立大学文学研究科叢書8)』の一部として刊行した。 第二には、昨年の秋から幕末・維新期江戸=東京における貧民の救済と統制を考察しはじめた。東京都公文書館所蔵の「順立帳」や「会議所伺」を主な材料として用いて、とりわけ江戸=東京の非人組織の解体プロセスや明治初期における府営救貧事業の展開に着目した。そしてポーターによるその初歩的な成果を近世史研究会で報告し、塚田他からコメントした。こうした比較史的分析を通じて、近代大阪の救貧体制の普遍性と固有性を浮き彫りにする基礎を築いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大坂における非人集団(垣外仲間)の明治初年の解体過程と大阪府の救貧施策に関する論文と学会発表を行うことができた。また、江戸・東京の明治初年の救貧関係史料の収集も進めており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
以上の研究成果を踏まえて、二つの方向に研究を進める必要がある。第一には、昨年の秋に開始した幕末・維新期江戸・東京における貧民の統制と救済に関わる分析を継続し、深めていく。東京府に残された「順立帳」と江戸町会所の後継者である東京会議所に残された「会議所伺」を主な材料として、19世紀後半における江戸=東京の救貧体制の歴史的展開を考察する。その分析において、江戸=東京の非人組織の解体過程に注目し、元非人の都市社会への再統合過程の実体的把握を目指す。 第二には、19世紀大坂における町内施行の内実を分析する。まず大阪市立中央図書館に所蔵されている「小林家文書」を用いて、貧民救済における個別町の役割を解明していく。その考察において、町内施行の主要な担い手となる家持層俵店層の性格と具体的な活動や町内施行の対象となる裏借屋層のあり方にスポットライトを当てる。こうした分析を通じて、貧民救済を可能にした社会諸関係の実態を把握したうえで、19世紀大坂の救貧体制において、町内施行がどのような位置を占めていたかを把握する。
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