研究課題/領域番号 |
13F03916
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
柴﨑 正勝 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 所長 (30112767)
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研究分担者 |
DEVARAJULU Sureshkumar 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所有機合成研究部, 外国人特別研究員
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キーワード | ニトリル / 不斉触媒反応 / NHC / 不斉合成 / 原子効率 |
研究概要 |
種々の不斉カルベン配位子を、トリアゾリウム型・イミダゾリウム型・チアゾリウム型カルベン及び周辺置換基も含めて幅広く合成し、各種遷移金属錯体を形成して網羅的に反応特性を精査した。求電子剤としてアルデヒド、求核種前駆体としてアセトニトリルを用いるモデル反応において、嵩高いイミダゾリウム型NHCとNi, Rh, Irの組合せが特に反応促進に有効であることが判明した。フリーのNHCに由来するアルデヒド同士のbenzoin縮合等の副反応は見られなかった。脱プロトン化されたアセトニトリルの直線型アニオンは、エノラートと比較して立体選択的付加反応が困難であり、継続的な配位子検討の結果60%前後のエナンチオ選択性を観測するに留まっている。そのため、まずはラセミ反応において反応プロファイルを徹底的に精査することとし、基質一般性の検討を行ったところ、芳香族アルデヒドの置換パターンと反応速度に強力な相関関係が見られる事がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応性に乏しいアルキルニトリルの効果的な求核的活性化法を見いだした。立体選択性の発現に難儀しており、新たなアイデアの注入が必須と考える。
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今後の研究の推進方策 |
Rh/NHC(N-ヘテロサイクリックカルベン), Ir/NHC, Ni/NHCがそれぞれアルキルニトリルのアルテヒドへのタイレクト型付加反応の有効な触媒となる事を見いだしている。キラルNHC配位子を網羅的に合成し、エナンチオ選択性の発現の可能性を追求したが、現在までのところ中程度のエナンチオ選択性に留まっている。今年度はまずアキラルな反応において触媒の特性を基質の嗜好性・官能基共存性も含めて網羅的に精査した後、異なるアプローチでエナンチオ選択性の発現を画策する。ニトリル官能基は立体バイアスが小さいために立体選択的な反応経路にエネルギー差が生じづらい傾向にあると予測し、超分子化学的な高立体バイアス錯体を触媒として用いる。キラルNHCはその合成に多大な時間と労力がかかり、仮に最適なNHC配位子を同定できたとしても多くの化学者が利用する汎用性のある不斉触媒反応に成りづらいと思われる。将来的な利便性も見越して、容易に合成可能なピリジン含有アキラルNHC配位子を用いたRh/NHCあるいはIr/NHC錯体に、(en)Pdあるいは(en)Ptを介して既存不斉リン配位子と高次錯形成させることで、有効反応場に効果的な不斉空間を構築させる。適宜DFT計算による錯体構造予測を行いつつ合理的アプローチで最適触媒への最短ルートを模索する。
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