研究概要 |
本研究プロジェクトでは,テラヘルツ(THz)帯のフォノンを制御・活用した小型・高性能のTHzデバイスを創出と応用展開に基づく新学際領域の創成を目的としており,今年度は,まずTHz波光源の性能向上への検討として,GaP結晶中のフォノン・ポラリトンを用いたTHz波発生では,100〜200μm程度の断面サイズを有する導波路構造を用いてフォノンを閉じ込め,高効率なTHz波発生を実現した。さらに,THz波発生の高効率化について結晶の物性(成長法や冷却効果)との関係を明らかにした。また,1.5μm帯の超高速光制御デバイスおよび周期分極反転結晶を用いた差周波THz波発生では1.5THz付近の連続THz波発生を実現し,光ファイバ接続の小型モジュール化を行った。さらに,有機結晶DASTを用いたTHz波発生では光注入型光パラメトリック発生を用いた狭スペクトルTHz波発生,およびガルバノ制御光パラメトリック発振器(OPO)を用いた広帯域・高速波長可変のTHz波発生を実現した。また,GaAsの分子層エピタキシーを用いて作製したタンネットダイオードは,室温連続発振で650GHzまでの高周波化を実現した。この発振器は独自の矩形導波管型共振器構造を用いており,WR-1.5(393〜750GHz),WR-1.2(492〜900GHz)を用いた。さらに高周波発振が可能なWR-1.0を用いた共振器構造の設計を行い,ダイオード多層構造,共振器構造内部の平坦化とヒートシンク構造やバイアスピン構造の最適化を追及した。一方,THz帯コヒーレント反ストークスラマン分光システムに高速波長可変OPOを導入して計測の高速化・高安定化を行い,液体試料のTHz帯振動の高感度測定と偏光特性よるスペクトル解析を実現した。また,誘導ラマン利得分光システムについては,高感度化のために励起光の波長について検討した。
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