研究課題
陽子を150MeVまで加速する150MeV FFAG加速器の開発研究を行っている。FFAG加速器は、物理実験のみならず癌治療や加速器駆動原子炉といった応用利用領域からも早期開発の要望が大きい。150MeV FFAG加速器は実用機のためのプロトタイプであり、今後主に癌治療のための照射技術の基礎開発研究を行う予定である。これまでに、FFAG加速器を構成する主な機器については建設を終了、本格的な運転にむけて各機器の立ち上げ調整を行い、FFAGリングへのビーム入射を確認した。入射用ビーム発生用サイクロトロンについては、10MeVまでの陽子加速およびビーム取り出しに成功した。さらに、本来直流電流型であるサイクロトロンのビームをパルス型加速器であるFFAG加速器に同期させるため、サイクロトロン加速電極に印加する加速電圧をパルス化(150μsec幅、250Hz周期)、サイクロトロンのパルス運転調整に成功した。最終的に、通常運転のための設定値である取り出しビーム0.5μA(ピーク電流25μA)を実現した。サイクロトロンで発生した陽子ビームは入射ビームトランスポート用電磁石を通じてFFAG加速器へ入射される。現在、ステアリング電磁石とトリプレット四重極電磁石一組(最終的には二組)を稼動し、FFAG入射直前の位置で約90%程度の通過効率を得ている。FFAGビーム入射系については、電磁石セプタムおよび電場セプタムの建設を完了、FFAG加速器への設置を行った。電磁石セプタムは1Teslaの励磁に成功し、設計値を充足することを確認した。また、電場セプタムについては真空中で90kV高圧の印加し電場として45kV/cmを確認した。FFAG加速器リング真空系については順調にコンディショニングがすすみ、ビーム入射に最低限必要な10^<-6>Torr程度の真空度を実現した。こうして10MeV陽子ビーム入射の準備が整ったことを受けて、FFAG加速器リングへのビーム入射を行った。磁場セプタム直後のFFAGセクターマグネット収束磁極中心においたファラデーカップによりビーム位置を測定し、入射初段のセプタムが設計通り機能していることを確認した。その後、電場セプタムのビーム通過を確認した後、電場セプタムへの電圧を印加、電場セプタムによりビーム軌道が設計値まで曲げられることを確認した。FFAGリング各所に設置したファラデーカップ、およびビーム測定電極によりビームを確認、最終的にFFAGリングをビームが一周したことを確認した。
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