脳における「匂い地図」と「嗅覚記憶」の解析

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13GS0007
• 研究種目: 創成的基礎研究費
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 森 憲作 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60008563)
• 研究分担者: 長尾 伯 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (50281647) ; 山口 正洋 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (60313102)
• キーワード: 匂い地図 / 嗅覚 / 嗅球 / 糸球 / セマフォリン / ニューロピリン / 内側半球 / 外側半球

研究概要

(1)マウス嗅球の「匂い地図」の研究 内因性信号の光学測定法と匂い刺激による最初期遺伝子Zif268の発現マッピング法とを組み合わせ、嗅球全体における「匂い地図」を調べた。この結果、機能単位である'Molecular Feature Domain'が嗅球全体にわたって存在し、どの個体においても、一定の位置に決まった方向をもって配置されていることがわかった(稲木ら、Eur.J.Neurosci.印刷中)。
(2)セマフォリン3A欠損マウスの嗅球「匂い地図」 軸索ガイダンス分子の一つであるセマフォリン3A分子の嗅球「匂い地図」形成における役割を調べた。セマフォリン3A遺伝子欠損マウスを用いて、嗅球での「匂い応答地図」を調べたところ、ニューロピリン1(セマフォリン3Aの受容体)を発現した嗅細胞軸索の投射標的糸球の空間配置が大きく変化し、嗅球での「匂い応答地図」にも大きな変動がみられた。`また、特定のサブセットの糸球の形成ができなくなっていた。この結果は、セマフォリン3Aによる嗅細胞軸索のガイダンスが欠損すると、成体の嗅球における「匂い地図」に大きな歪みが生じることを示す。
(論文投稿中)
(3)嗅球「匂い地図」の内側半球と外側半球間の相互作用 1つの嗅球には内側半球「匂い地図」と外側半球「匂い地図」からなる1対の「匂い地図」がある。内因性信号の光学測定法とトレーサー注入法を組み合わせて調べたところ、たとえば内側半球の脂肪酸応答ドメインは外側半球の脂肪酸応答ドメインとTufted cellsの軸索側技を介して密接な線維連絡があることが判明した。
現在この線維連絡の機能的意義を電気生理学的手法を用いて解析している。

研究成果

• [文献書誌] Yoshihara Y., Nagao H., Mori, K.: "Sniffing out odors with multiple dendrites"Science. 291巻. 835-837 (2001)
• [文献書誌] Tatsura H., Nagao H., Tamada A., Sasaki S., Kohri K., Mori K.: "Developing germ cells in mouse testis express pheromone receptors"FEBS letters. 488巻. 139-144 (2001)
• [文献書誌] Mizuno T., Kawasaki M.Nakahira M., Kagamiyama H., et al.: "Molecular diversity in zebrafish NCAM family : three members with distinct VASE usage and distinct localization"Molecular and Cellular Neuroscience. 18巻. 119-130 (2001)
• [文献書誌] Sawamoto K., Yamamoto A., Kawaguchi A., Yamaguchi M., Mori K., et al.: "Direct isolation of committed neuronal progenitor cells from transgenic mice coexpressing spectrally distinct fluorescent proteins regulated by stage-specific neural promoters"J Neurosci Res.. 65巻. 220-227 (2001)
• [文献書誌] Sawamoto k., Nakao N., Kakishita K., Ogawa Y., Toyama Y., et al.: "Generation of dopaminergic neurons in the adult brain from mesencephalic precursor cells labeled with a nestin-GFP transgene"J Neuosci. 21巻. 3895-3903 (2001)
• [文献書誌] Inaki K., Takahashi Y., Nagayama S., Mori K.: "Molecular feature domains with posterodorsal -anteroventral polarity in the symmetrical sensory maps of the mouse olfactory bulb :"(in prss). (2002)