研究概要 |
(1)嗅覚神経系における覚醒・睡眠状態に依存した感覚ゲーティングの発見 嗅覚を除いたすべての感覚系では、大脳皮質一次感覚野への感覚神経系路は視床を経由し、視床において「覚醒・睡眠状態に依存した感覚ゲート」のコントロールを受ける。覚醒時には、視床は感覚入力情報を効率よく大脳皮質感覚野へと伝達するが、徐波睡眠時には視床の感覚ゲートは閉じており、感覚入力は大脳皮質感覚野へは伝わらない。我々は、大脳皮質一次感覚野(嗅皮質)への神経経路が視床を経由しない嗅覚神経系においても「感覚ゲーティング」がおこるか否かを、ラットの嗅球、嗅皮質を電気生理学的手法で解析することにより調べた。 この結果(1)嗅皮質においても顕著な「感覚ゲーティング」がおこること、(2)嗅皮質の感覚ゲーティングは、視床の感覚ゲーティングと同期しており、徐波脳波時にはゲートが閉じ、速波脳波時にはゲートが開いていることを発見した。この結果は嗅皮質が、覚醒時には嗅球の「におい地図」を読み、嗅球からの入力を反映した出力をだすが、徐波睡眠時には嗅球の「におい地図」を無視し、覚醒時とは異なった情報処理モードに切りかわることを示す。また、嗅皮質ニューロンからの細胞内記録により、視床による「感覚ゲート」がない嗅覚神経系では、嗅皮質の神経回路内に「感覚ゲーティング」をもたらす神経機構が存在することが示された(Murakamiら,Neuron,2005,印刷中)。 (2)嗅球・嗅皮質の「におい地図」の解析 昨年度に引き続き、嗅球の広範囲の部分での「におい地図」の詳細な解析を進めるとともに、嗅皮質の「におい地図」の解析を、光学的測定法と電気生理学的手法を組み合わせて進めた。 (Takahashiら,J.N.P 2004;Takahashiら,J.Neurosei,2005;Igarashi & Mori, J.N.P.2005)
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