研究概要 |
本プロジェクトにおける研究目的は以下の2つであった : ① : 所得効果を許す非分割財市場における競争均衡集合の具体的構造を明らかにすることにより、消費者にとって特に支出の割合が大きい住宅・車市場の市場均衡分析を容易にする。② : 研究①で得た知見をもとに, 現実の住宅市場・中古車市場の応用分析を理論・実証の2つのアプローチで行う。 本年度の主な研究は①であった。具体的内容は以下である : Kaneko (1982)の一般化割当て市場モデルの競争均衡の構造が明らかにされた。そこでは各財について競争均衡価格と配分は、同時に複数存在しないことが明らかとなった。この結果の応用として、市場参加者が多数存在するときの均衡価格の一意性が示された。さらに、消費者が1単位以上の非分割財を消費可能な非分割財市場においても先の性質が成立しうるかが示された。結果として消費者の財選択に所得効果がない場合に先の性質は拡張されるが、所得効果を許す場合には性質は拡張されないだけでなく、競争均衡そのものが存在しないケースがあることが示された。これらは当該分野で知られていない結果であり、新規性がある研究と言える。また諸結果は非分割財市場モデルを様々な現実市場に応用する際に役立つものである。 並行して、研究②を以下の内容で行った : 現実の東京都市圏近郊の住宅価格データを採取し、住宅価格の特徴を調査した。その結果、東京郊外(八王子・立川など)と東京中心地付近(中野・三鷹)それぞれの価格分布に関して、占有面積の上昇率に対する価格の上昇率が、東京中心付近の方がより大きいという特徴的な性質が明らかになった。この性質を理論面から考察するために、研究①のモデルに更なる仮定を設けて、単一中心都市を持つような住宅市場に置いて理論価格が上記のような特徴的性質を持つための十分条件は何かを考察した。(この研究は今後も継続予定である) 研究①は国際誌「Journal of Mathematical Economics (Elsevier)」に掲載された。
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