研究課題/領域番号 |
13J00114
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小林 峻 琉球大学, 理工学研究科, 特別研究員(DCI)
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キーワード | イルカンダ / Explosive opening(裂開) / オオコウモリ / ニホンザル / ニホンテン / 送粉 / 誘引形質 / 盗蜜 |
研究概要 |
イルカンダMucuna macrocarpa(マメ科)は広域分布しているにもかかわらず、特殊な送粉様式を持ち特定の送粉パートナーである「裂開者」が必要な種である。裂開者がいなければ、他花受粉ができない。25年度は沖縄島において、未調査であった在来動物の生息する自然林に自動撮影カメラを設置し、訪花動物を特定した。その結果、沖縄島における裂開者は他のMucuna属同様オオコウモリのみであることが明らかとなった。また、送粉に貢献しない盗蜜者としてノグチゲラが記録されたが、これはノグチゲラの採餌生態の新知見として重要な観察であった。一方、オオコウモリの分布しない大分県蒲江では、ニホンザルとニホンテンが裂開者となっていた。ニホンザルは両手を用いて裂開を行っており、既知の裂開行動と比べ異質であったが、多数の花を裂開した。ニホンテンの裂開行動はオオコウモリと類似していたが、訪花頻度が低く裂開数は少なかった。Mucuna属では一般にコウモリ類が裂開を行うことから、これら2種は新たな分類群の裂開者であり、裂開者が置き換わった初めての例となった。 裂開者が異なることから、誘引形質も裂開者に合わせて変化していることが予想されたため、沖縄島と蒲江で花の形質に関する調査した。しかし、両地域において花蜜の分泌パターンに違いは殆ど見られなかった。また、匂いの放出パターンにも大きな違いが見いだせなかった。そのため、本種は特異な形態を持つにもかかわらず、特定の分類群に依存していない可能性がある。そうであれば、送粉戦略の進化を議論する上で重要な知見となる。しかし、蒲江では25年度は雨が少なかったということや、蒲江が分布の北限である点などから、蒲江や他地域において追加の調査が必要である。 2月からはオオコウモリは分布しないがイルカンダの分布の中心である台湾において、訪花動物に関する調査を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、沖縄島および大分における裂開者の特定を行うことができた。また、両地域において誘引形質に関する基礎データを得ることができた。しかし、誘引形質についてはデータ量不測のため、追加調査が必要である。比較のための台湾での調査も予定通り開始することができた。執筆を予定していた論文については、受理に至っていないが、査読者とのやり取りをしつつ修正中である。
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今後の研究の推進方策 |
台湾における裂開者の特定を最優先する。その他、台湾での野外調査において動物相および裂開者以外の訪花者相の解明を目指すと共に、花蜜の分泌パターンや匂いの強度など誘引形質に関する計測を行う。また、調査地間で花期が重なるため、研究協力者と協力しながら、沖縄島および大分県蒲江における誘引形質に関する調査を継続する。 研究成果に関しては論文や学会発表において適宜公表していく。また、学校などにおいて研究成果の報告を行うなどの調査地におけるアウトリーチ活動、台湾の大学での研究報告など国際連携活動も行っていきたいと考えている。
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