研究課題/領域番号 |
13J00114
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小林 峻 琉球大学, 理学部, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イルカンダ(ウジルカンダ) / explosive opening(裂開) / 送粉 / クリハラリス / タイワンホオジロシマリス / 地域変異 / 無飛翔性動物 / 花蜜 |
研究実績の概要 |
イルカンダMucuna macrocarpa(マメ科)は東南アジアから日本にかけて広域分布している。本種は特殊な送粉様式を持ち特定の送粉パートナーである「裂開者」を必要とし、裂開者がいなければ、他花受粉ができない。裂開者の地域変異を明らかにするために、25年度までに沖縄島と大分県蒲江で訪花者に関しての調査を行い、26年度は沖縄島や蒲江と動物相が異なる台湾北部において、訪花動物の記録を行った。その結果、台湾ではクリハラリスとタイワンホオジロシマリスが裂開者となっていた。このうちクリハラリスによる裂開が99%であったため、クリハラリスが台湾における有力な送粉パートナーであると考えられる。また、クリハラリスの裂開行動はオオコウモリの裂開行動と類似していた。これらのことは、本種の送粉パートナーの決定には、従来から指摘されている訪花者の分類群や形態の類似性のみではなく、訪花者の採餌行動特性も重要であることを示唆している。 裂開者が地域間で異なることから、花の誘引形質や形態に地域変異があることも予想された。そこで、誘引形質の1つである花蜜に関しての調査を実施している。25年度までに沖縄島と蒲江で実施した。26年度は蒲江と台湾北部において調査を行った。26年度も蒲江で実施したのは、25年度に例年より雨量が少なく、そのことが蜜量や糖度に影響していた可能性があったためである。その結果、蜜量・蜜重量・糖度については、いずれの地域においても日変化がなかった。蜜量および蜜重量は3地域間で有意な違いがなかったが、糖度は沖縄島で低く、蒲江で高い傾向であった。しかし、最も差の大きかった沖縄島と蒲江を比較しても平均値の差は4%であったことから、現段階では裂開者に合わせた糖度の相違ではなく、各地域で様々な動物を誘引していると考えられる。今後、糖構成比の地域間比較など追加調査も必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、訪花動物に関する調査を台湾北部で実施し、訪花者および裂開者を明らかにでき、訪花者の訪花行動を記録することができた。また、誘引形質に関する調査も、花蜜の蜜量、蜜重量、糖度の日変化について大分県蒲江、沖縄島、台湾北部で明らかにすることができた。 しかし、花蜜の糖構成比に関しては調査することができず、次年度の課題となった。また、匂いの分泌パターンについては調査方法を確立することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は台湾北部で訪花者や花蜜の分泌パターンの調査を実施したが、27年度は動物相および結実状況が異なる南部における訪花動物について調査する。また、研究の進捗状況から、本種の送粉者の地域変異の解明のために、当初計画していなかったMucuna属の分布の中心であり、これまで調査した地域において裂開者となっていた分類群の動物が全て分布している熱帯のタイにおける訪花者の調査を計画している。 研究成果に関しては論文や学会発表において適宜公表し、研究成果のアウトリーチ活動も行う。台湾やタイにおいて研究報告を行うなど国際連携活動も行う予定である。
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