研究課題
miRNA制御因子であるLin28aの遺伝子欠損マウス(KOマウス)が脊椎のホメオティック変異を呈することから、Lin28aを介したRNA階層での遺伝子発現制御機構が脊椎のパターニングに重要であるという仮説の下、より詳細な分子メカニズムの解明を目指し研究を行った。KOマウスではHox遺伝子群の発現が顕著に亢進しており、in situ hybridizationにより発現領域を調査した結果、一部のHox遺伝子の発現領域が前方に拡大していることが明らかとなった。さらに、レチノイン酸投与実験からHox遺伝子の発現の増加及び発現領域の拡大が表現型の直接の原因であることが示唆された。Lin28aがlet-7の制御因子であることから、let-7を過剰発現するトランスジェニックマウスを作製した。しかしながら、骨格パターン異常は今のところ確認されておらず、KOマウスの表現型がlet-7の発現亢進に起因するのかは依然不明のままである。また、Hox遺伝子の発現を制御することで個々の脊椎の特異化を促進することが示唆されているmir-10、及びmir-196の遺伝子欠損マウスを作製し、脊椎の特異化、前後軸の形成におけるmiRNAの重要性を明らかにすることを目的とし解析を行った。それぞれのmiRNAが複数の遺伝子座に存在しファミリーを形成しており通常法での遺伝子欠損マウスの作製は困難であったが、TALEN及びCRISPER/Cas9システムを導入し、短時間に効率良く上記miRNAの欠損マウスの作製に成功した。mir-10a, mir-10bのダブル変異マウス、及びmir196a-1, mir-196a-2, mir-196bのトリプル変異マウスでは、他の実験モデル動物を用いたこれまでの報告と同様に、それぞれ脊椎のパターニング異常が観察されたことから、これらのmiRNAが骨格パターン形成に重要であることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度の解析から研究テーマの主軸であるLin28aを中心とした脊椎のパターニングにおいて、その分子メカニズムとしてHox遺伝子の発現亢進及び発現領域の拡大が表現型の主な原因であることが明らかとなった。また、TALENやCRISPR/Cas9システムの導入により、最終年度に予定していたmiRNA欠損マウスの表現型を得るところまで研究が進んでいる。
初年度はlet-7を過剰発現するトランスジェニックマウスの作製、解析を行ったが、骨格パターン異常は今のところ確認されておらず、表現型がlet-7の発現亢進に起因するのかは依然不明のままである。今後はlet-7遺伝子欠損マウスを作製し、表現型のレスキューが可能であるかを検討していく。また、Lin28aによって制御される遺伝子群を同定することで、表現型との関連を検討したい。さらに、mir10変異マウス、及びmir-196変異マウスでの詳細な表現型解析を行い、骨格パターン形成におけるそれらのmiRNAの重要性を明らかにしていきたい。
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PLoS One.
巻: 8
10.1371/journal.pone.0076004.
Biol Reprod.
巻: 88 ページ: 143
10.1095/biolreprod.113.107607.