研究実績の概要 |
1.Lin28aによる骨格パターン制御機構の解析 次年度は、Lin28a-/-マウスにおけるHox遺伝子群の発現異常を引き起こす原因の究明を行った。Lin28a-/-マウスでは特定のポリコーム遺伝子の発現低下が確認された。また、この遺伝子はlet-7の標的遺伝子である可能性が示唆された。Lin28aとのダブルヘテロマウスを作製した結果、ダブルヘテロマウスは、Lin28a-/-と同様の骨格以上を呈することが明らかとなった。このことから、Lin28aとポリコーム遺伝子群との間に遺伝的相互作用があることが示唆された。さらに、Lin28a-/-ではポリコーム遺伝子複合体のHox遺伝子領域への占有率が低下していることが明らかとなった。以上の結果から、Lin28a-/-マウスではlet-7の発現が亢進することでポリコーム遺伝子の発現及びHox遺伝子領域へのリクルートが阻害され、その結果Hox遺伝子の発現が脱抑制されホメオティック変異を呈することが示唆された。
2.Hox遺伝子座に存在するmicroRNAの機能解析 次年度は、初年度に作製したmir-10a, mir-10bの欠損マウス、及びmir-196a-1, mir-196a-2, mir-196bの欠損マウスの表現型解析を中心に行った。また、真獣類特異的なmir-615の欠損マウスを作製し、骨格パターン制御との関連を検討した。その結果、mir-10、mi-196欠損マウスにおいては、これまでの報告と同様にそれぞれ脊椎のパターニング異常が観察された。一方、mir-615に関しては骨格パターン形成には必須ではなく、mir-10、mir-196とは異なる生命現象に関与していることが示唆された。さらに、mir-196の表現型に着目し、表現型の直接の原因と考えられる標的遺伝子の3’UTRに存在するmir-196標的配列を欠損したマウスを作製した。このマウスでは標的遺伝子の異所性発現が観察され、その領域とmir-196の発現領域が重複することから、その領域では本来mir-196によって標的遺伝子の発現が転写後に直接制御されていることが示唆された。
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