研究課題
本研究では,未踏領域である硬X線非線形光学の開拓を目的に,多層膜Kirkpatrick-Baezミラーを用いたXFELのsub-10nm集光の実現を目指している.ミラー光学素子においては,原子的に平滑かつ急峻な非球面をPV 1 nmを上回る形状精度で作製する必要がある.このため,曲面測定に強いレーザー顕微鏡をメインプローブに採用し,そのプローブの姿勢をヘテロダイン干渉計によってsub-nm精度でモニターできる形状計測システムを構築し,ミラー基板のオフラインでの形状評価を可能にした.そして,この計測結果をもとに,所定精度の基板をディタミニステックに加工することを可能にした.本ミラー光学素子では,素子へのX線の斜入射角度が全反射の臨界条件を越えており,ミラー基板に多層膜コーティングを施す必要がある.そこで,硬X線領域で実績のある白金/カーボン多層膜に注目し,そのXFEL損傷耐性を詳細に評価した.反射率の劣化曲線や断面TEMを用いた損傷形態を詳細に評価し,目的の集光において利用可能な条件が存在することを明らかにした.さらに,集光効率に直接影響する反射率の劣化が,成膜時のPt層の結晶化によって起こることを見出し,その解決法としてPt層にCを添加することを提案し,光学系全体のスループットを約10%向上することに成功した.集光ビームの最終的な波面精度は,XFELビームラインにミラー光学素子をセットした状態でat-wavelength評価する必要があるが,ここではTalbot効果を用いたシングルグレーチングX線干渉計を構築し,この計測に成功した.そして,開発したat-wavelength計測法によって,ミラー基板上でsub-nmの形状誤差に対応する波面誤差の評価を可能にし,同時にミラー光学素子の姿勢調整にも適用することによって,世界で初めて約10 nmにXFELを集光することに成功した.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Optics Express
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