研究課題
本研究は、NANTEN2望遠鏡によって既に取得済みの銀河系中心部の分子雲の3次元(位置・速度)データをもとに、多波長、特に赤外線とガンマ線との比較から、銀河系中心部の物理状態とその進化についての正しい描像を得ることを目的としている。今年度は、まず赤外線との比較に着手した。具体的には、近年銀河系中心部に発見された数本のフィラメント状赤外線放射に付随する分子雲を発見し、その3次元構造ならびに速度場構造についての詳細な研究を行った。今年度得られた主たる実績を以下に挙げる。1. フィラメント状赤外線雲に付随する分子雲の発見とその質量やエネルギーなど基本的な物理量を導出し、国際研究会(IAU 303 : FEEDING AND FEEDBACK IN A NORMAL GALATIC NUCLEUS ; 口頭)、日本天文学会年会(秋季・春季 ; どちらも口頭)などで報告を行い、研究代表者の主著論文(Enokiya et al. 2014)としてまとめた。2. フィラメント状赤外線放射中で星形成率の促進がみられるかを知るため、ヨーロッパ南天天文台(チリ)の近赤外線望遠鏡(NTT)を用いて、全てのフィラメントについてこれまで得られていなかった分光観測を行った。また、いくつかの付随分子雲については、NANTEN2のデータでは解像度が不十分であったため、オーストラリアのMopra望遠鏡にて高分解能追観測を行った。3. 以上の観測・解析結果について、小研究会を開催し理論シュミレーションとの比較などを行った。
2: おおむね順調に進展している
分子雲データの赤外線との比較に関しては、現在進行中の観測はあるもののそれ以外に関しては全て完了した。また、ここで得られた解析結果からは、次年度のガンマ線との比較にも大きくつながる銀河系中心部の3次元構造についての重要な示唆も得られた。以上をもって研究は順調に進展しているものと判断する。
次年度は、分子雲データと、ガンマ線などの高エネルギー帯の観測データとの比較に着手する。この際、今年度得られた銀河系中心部の3次元構造が大いに役立つものと思われる。X線・ガンマ線でみられる高エネルギー現象は、過去の激しい活動性と関連していることが多く、我々の分子雲データと合わせて銀河系中心部の何らかの活動痕跡を見つけることが出来る可能性もあり、研究の見通しは非常に良い。
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The Astrophysical Journal
巻: 780 ページ: 72-91
10.1088/0004-637X/780/1/72