銀河進化を解明する上で、中心部を理解することは重要である。本研究は、NANTEN2望遠鏡によって取得されたこれまでで最も広範囲で詳細な銀河系中心部の分子雲の3次元(位置・速度)データをもとに、多波長データとの比較から、銀河系中心部の物理状態とその進化についての描像を得ることを目的としている。今年度は、昨年度の研究成果をもとにさらに広い領域の分子雲の性質について研究を進めるとともに、これまでの成果をまとめた。具体的には、1990年代以降提唱されたいくつかの銀河系中心部の分子雲の幾何学モデルとNANTEN2のデータの比較を通し、単一のモデルでは説明のできない薄く広がった高速度の雲があることを発見した。またこれらの内容をまとめ、研究会や学会の場で報告した。 今年度得られた主たる実績を以下に挙げる。
1.銀河系中心部のこれまでの分子雲の幾何学モデルをまとめるとともに、新たに発見した広がった高速度雲について、海外や国内の研究者(Denise riquelme博士など)を招聘し議論を行った。また国内で小研究会を開催し、磁気流体力学理論や赤外線天文など他分野研究者との議論を行った(「銀河系中心部小研究会 -銀河面外に残された痕跡-」の開催)。また、本内容を学会にて報告した(日本天文学会秋季年会;口頭)。
2.以上ならびに昨年の赤外線フィラメントの観測・解析結果を、榎谷博士論文の主論文の中心部分としてまとめた。
|