平成27年度に行なった研究の具体的内容としては主に、前年度に行なったトランスクリプトームのデータ解析を行ない、Rorippa aquaticaの表現型可塑性に関わる遺伝子および遺伝子ネットワークの同定を行なった。これまでの研究によってclass I KNOX (KNOX1)遺伝子がR. aquaticaの表現型可塑性の発揮に重要であることが明らかになっているが、トランスクリプトーム解析によって、その中心的な制御にPIF遺伝子が関与することを示すデータが得られた。これまでにKNOX1遺伝子の発現が生育温度や光強度といった外部環境により変化することが明らかになっているが、それらの様々な外部環境因子をPIFが統合していると考えられ、本研究にとって大きな進展となった。また、R. aquaticaには表現型可塑性の程度が異なる二つの地域系統が存在することが知られ、それらの生理学的差異を明らかにするための解析も行ない、これまで知られていなかった光合成特性の差異、青色光への応答の差異などといった新規の生理学的な差異を明らかにしており、これに関して現在論文を執筆中である。 また、平成27年度における研究の成果については、R. aquaticaの葉の発生時の細胞学的解析結果をPLOS ONE誌に発表した。また、R. aquaticaは生育温度の変化により表現型可塑性を示すが、その際の温度の感受に葉が関わることを示した論文をPlant Signaling & Behavior誌に発表した。加えて、前年度に発表した論文にて使用した、S期を経過した細胞の可視化に関する技術をBio-protocol誌にて発表した。その他に、岩手大学で開催された第57回日本植物生理学会にて、研究成果の発表を行なった。
|