本研究ではこれまでのフォトニック結晶導波路(PCW)スローライトデバイスとシリコンCMOSプロセス利用を発展させ、これまでの基礎研究レベルでは考えられなかった大規模・高密度・高機能な光集積を実現する。それによって、次世代光ネットワークで重要となる高度な光信号処理や光計測システムの実現を目指した。本年度は以下の3つの点で大きな成果を挙げた。 1. 「CMOSプロセスを用いて製作したデバイスの統括的な特性評価」では、PCWに加えて光ファイバ接続のためのスポットサイズ変換器や光配線として利用されるシリコン細線導波路などを総合的に評価した。このようなコンポーネントは10年以上、個別に研究が進められてきたが、網羅的にまとめた文献は私が知る限り存在しなかった。そこで、これらの設計概要や特性評価結果をまとめた。 2. 「二光子吸収光検出器」は、これまでにPCWスローライトで増強された二光子吸収キャリアの光検出器を実証していた。しかし、前述のシリコン細線導波路とPCWの光結合率が低く、検出器の最低感度を制限していた。そこでシミュレーションにより微細構造を調整することで、結合率を2倍以上向上できる可能性を示し、初期実験でその効果を確認した。この成果は1とともに学術論文への投稿の準備を進めている。 3. 「オンチップ光相関計」は、高速光信号の時間波形を計測する光集積デバイスである。製作していたデバイスの測定方法を再度検討することにより、この種の計測器に求められる波形の定量的な評価が可能となり、基礎的な動作が実証された。この成果は2とともに、国際会議を含めた学術発表会で報告した。2014年3月の春季応用物理学会では、成果が高く評価され、ポスター発表件数の上位5%に相当するPoster Awardノミネート最終候補に選出された。
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