研究課題
いもち病菌は、感染器官分化過程において胞子および付着器でオートファジー機構が誘導され、葉面上からの宿主侵入に必須であることが分子生物学的解析結果から示唆されてきた(Claire et al, Science 2006)。一方、我々の研究成果より、根からハイフォボディウム(未成熟付着器)を介して感染する場合や親水面上で付着器未形成の胞子ではオートファジーの誘導は認められないことが明らかとなったことから、オートファジー誘導と付着器形成には密接な関連性があると考えられた。オートファジー標識蛍光酸性プローブであるMono-dancylcadaverineを用いて、親水膜上で培養した付着器未形成胞子と疎水膜上で培養した付着器形成胞子のオートファジー誘導部位や時期を経時的に蛍光顕微鏡下で調査した。経時的観察を行った結果、付着器未形成胞子の感染器官ではいずれの時間帯でも陽性反応は認められなかった。これに対し、付着器形成胞子の感染過程では、接種12時間後の胞子内で強い陽性反応が確認された。これらの結果から、いもち病菌において胞子のオートファゴソーム誘導は接種12時間後に最も活発になることが示唆された。また、化学的固定法による透過型電子顕微鏡観察の結果でも接種12時間後の胞子でオートファゴソームの形成が活発になることが示唆された。これにより、我々は蛍光顕微鏡及び透過型電子顕微鏡によるオートファジー検出法を確立するとともに、形態学、細胞学的にオートファゴソームの経時的誘導パターンを捉えることに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
形態学的・細胞学的視点からオートファジーの実体を捉えることに成功したため。
オートファジー関連遺伝子群として、いもち病菌において24個のオートファジー関連遺伝子が見つかっており、その中で病原性に関連する遺伝子の殆どがマクロオートファジー関連遺伝子であることが明らかとされてきた。その中でもコアとなるAtg8 (MGG_01062.5)に焦点を絞り、ΔAtg8破壊株を作成している。一方、ミトコンドリアの選択的オートファジーであるミトファジー関連遺伝子Atg24も病原性関連因子であることが近年の研究成果から明らかとされてきたので、このAtg24 (MGG_03638)に着目してΔAtg24破壊株を作成する。
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Biological Control
巻: 71 ページ: 1-6
Applied and Environmental Microbiology
巻: 79 ページ: 3684-3691