研究概要 |
本研究は, トレリスシェイピング(TS)を利用したピーク電力低減技術に基づき, 無線通信システムのさらなる電力効率向上, およびそれによって得られる受信側特性の向上を達成することを目的としている. 初年度の主な成果は以下のとおりである. 1. TSと誤り訂正符号の連接システムおよび本研究者がこれまでに提案しているTSの軟判定復号アルゴリズムに関して, TSで用いられる誤り訂正符号の生成多項式と, その送信側および受信側特性の関係を計算機シミュレーションにより詳細に評価した. 本研究で得られた知見は, 無線通信分野の論文誌の最高峰であるIEEE Transactions on Wireless Communicationsに論文投稿を行い, 条件付き採録の判定を受けたため, 改訂したものを再度投稿予定である. 2. TSと同じく信号制御にトレリス構造を用いるが, TSとは異なり, 情報ビットと信号制御ビットが分離した構造を有する新たなピーク電力低減手法を提案した. 本手法は, その分離構造により, TSよりもピーク電力低減性能は若干劣化するものの, 受信性能については向上する. 本手法のアイデアおよび得られる結果については現在国内特許出願中であり, また国際ワークショップIEEE CTW2014および国際会議IEEE ISIT2014に論文を投稿し, 両方ともに採択が決定済みである. 3. TSの無符号化時の受信ビット誤り率に関して, 理論解析手法の構築を行った. 本解析手法は, TSにより生成されるQAM信号の分布が一様ではないこと, およびTSの復号器にて誤り伝搬が発生することの両方を考慮に入れており, AWGNチャネルだけでなくフェーディングチャネルにおいてもほぼ正確な理論値を得ることが可能である. 本研究をまとめた論文は現在, 国際会議IEEE GLOBECOM2014に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に取り組む予定であったTSのピーク電力低減性能に関する理論検討までは至らなかったが, 代わりにTSの受信ビット誤り率の理論解析手法の構築を行い, 国際会議に投稿を行っている. また, TSの問題点を鑑みて考案した新たなピーク電力低減手法に関する研究は, 当初は計画されていなかったものの, 新規性があるとともにTSよりも良好な受信特性が得られたため, 特許出願すると同時に国際会議への論文投稿を行い, 採択に至っている. 以上を踏まえて, おおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
計画書で示したとおり, TSを適用したOFDMシステムに対して, 電力増幅器の電力増幅効率および非線形効果を加味した総合的なシステム評価を行う. また, 同時に, 当該年度に取り行ったTSの受信ビット誤り率に関する理論検討, および提案した新たなピーク電力低減手法についてより詳細に結果をまとめ, 著名な国際論文誌に論文投稿を行う予定である.
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