大気吸い込み式レーザー推進器における一連のエンジンサイクルの中で、吸気不足による推進効率の低下は、推進器打ち上げにおける主要な問題の一つである。この推進器におけるエンジンサイクル改善を目的とし、ガソリンエンジンなどで利用されているリードバルブをレーザー推進器用に開発することを本研究では行ってきた。本年度は、レーザー推進器におけるリードバルブ開発の第一段階として、推進器内部での圧力変化や衝撃波の伝播を調べるために、可視化実験及び圧力測定を行った。可視化実験においてはレーザープラズマ及び衝撃波を100万分の1秒単位で計測し、その伝播特性を詳細に記録することに成功した。この結果から、投入エネルギーと最適な推進器の形状が判明し、推力効率の高い推進器を設計する指針を得た。一方で可視化実験と同程度の計測精度を持つピエゾ素子型圧力測定器を利用し、推進器内部の圧力測定に成功した。その結果、推進器内部での推力に寄与しない負圧部分の時間が判明し、リードバルブの作動周波数を特定することが可能となった。 大気吸い込み式レーザー推進器における推力低下の改善においては、過去にリードバルブを利用した施策は過去に例がなく、また設計指針やその改善について研究がなされず本研究はその点において重要な成果を挙げた。またこれらの結果は、レーザー推進器だけでなく、高周波マイクロ波を利用した推進器など様々な先進的な大気吸い込み式推進器に利用することが可能な研究成果である。
|