研究課題
近年、多様な外場に応答する多重外場応答性錯体に関する研究が盛んに行われている。それに伴い構築した錯体の実用化に向けた試みも多様化している。本研究では既報の多重外場応答性一次元鎖錯体を修飾し新たな集積構造体の形成および新規物性発現、素子化を目的としている。今回申請書に従い既知の[CoFe]一次元鎖錯体の修飾について検討した結果、以下に示す研究成果を得た。予定していた配位子による長鎖アルキルの導入は合成が困難であり、目的の新規配位子の合成は達成できなかった。その一方でカウンターアニオンへの長鎖アルキル部位の導入について検討した結果、原料のイオン交換によって新規錯体を構築した。得られた錯体は、動的光散乱測定により溶液中において一次元チューブ構造に特有な円柱状の分布を示しており、複数の一次元鎖が束になったバンドル構造を形成していると考えられる。加えて溶媒条件を変えることで、その鎖長が変化することを明らかにした。また既報の一次元鎖錯体はあらゆる溶媒に対して不溶性であり、基板表面への修飾を検討する上で溶解度の向上が課題の一つであった。今回新たに得られた錯体は多種多様な有機溶媒に対して十分な溶解性を示し、ITO基板に対してドロップキャストすることで薄膜化した錯体の構築を達成した。得られた薄膜のAFM測定により複数のチューブが一定間隔で配列した表面形状像の撮影に成功した。以上から長鎖アルキル部位をもつカウンターイオンをもちいた新規錯体は一次元鎖構造を有していると考えられ、今後は表面修飾ならびに、固体状態では困難であった単鎖での物性解明が可能であると期待される。
4: 遅れている
本研究において初年度の計画は、新規配位子合成の達成およびそれを基にした新規構造体構築を基軸としている。しかしながらその配位子合成が困難であったためアプローチの方向性を転換し、カウンターアニオン交換による一次元鎖間相互作用の制御を目指した。長鎖アルキル部位をもつ一次元鎖錯体の構築を達成したが、その物性測定には至らなかった。
新規構築した一次元鎖錯体の物性探索を進める。また有機溶媒に可溶な一次元鎖錯体であるため櫛形電極等を用いて電場応答性について検討する。
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