研究課題/領域番号 |
13J00239
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
遠藤 みどり 宮城学院女子大学, 学芸学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 日本古代史 / 天皇制 / 後宮制度 / 王権論 |
研究概要 |
本年度は1後宮制度の再編過程、2光仁・桓武朝における天武系皇統というテーマについての研究、および3正倉院文書の調査を行った。 1は、本研究課題の第一の研究である。従来、平安初期において皇后の地位の低下がおこると考えられてきたが、この時期の皇后の変質は後宮制度の再編の問題と一体的におきたもので、必ずしも皇后の地位が低下したとは言えないのではないかという問題意識から、令制キサキと令外キサキの比較検討を行い、皇后も含めた後宮制度の再編過程を明らかにした。その結果、令外キサキは令制キサキと比べ、相対的に天皇や外戚への依存が強まっていることが明らかとなった。これは、皇子女の扶養までを含んだ「母子一体」型の制度であった令制キサキ制度が改変され、皇子女の扶養に父である天皇や外戚が介入していくことでおこった変化である。皇后の地位の低下とみえる現象も、こうした令制キサキ制度の改変に連動した変化とみることができるのである。また、併せて日本古代王権と関わる女性がこの時期を境に女帝から母后へと変質することの意味に言及するため、古代日本に女帝が出現する意義についても考察をした。 2は、26年度に行う研究課題「譲国儀の成立」についての事前考察である。その結果、桓武朝初期におきた氷上川継の乱の歴史的意義を考察するなかで、光仁朝における天武系皇統への待遇が決して悪いものではなく、むしろ優遇されていたことが明らかとなった。従来、天智系皇統として一体的に捉えられていた光仁・桓武朝であるが、光仁と桓武の間の政策面での隔たりは意外に大きいものである。 3の調査も、26年度に行う研究課題「王権内における天皇生母の役割」の事前準備である。報告者はこれまで正倉院文書を使用して研究を行った経験がないため、受入研究者である大平氏のもとで正倉院文書購読の基礎から学び、史料の分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、上記3の正倉院文書の調査は本年度中に終える予定だったが、来年度も継続することになり、若干の遅れが生じている。但し、26年度に行うはずであった「譲国儀の成立」に関する研究の事前考察を既に本年度で終えることができたため(上記2)、全体としてはおおむね計画通りの進捗である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度進捗が遅れてしまった正倉院文書の調査を優先的に進める。それと並行して、本年度行った事前考察をもとに、「譲国儀の成立」についての研究をまとめる。その後、「王権内における天皇生母の役割」についての考察を行う。
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