研究課題/領域番号 |
13J00279
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
吉村 健司 総合研究大学院大学, 文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | カツオ漁 / 伝統の再興 / 漁業日誌 / 浮魚礁 / カツオ節 / 生業戦略 / 与那国島 / 本部町 |
研究概要 |
本年度は現地調査に約8か月を要した。この間、与那国島での調査と並行して大きな動きの見られた沖縄県本部町においても現地調査を実施した。また、沖縄県公文書館において過去のカツオ漁に関する資料収集を実施した。その他、現地調査期間外には、法政大学の沖縄文化研究所において過去のカツオ漁に関する新聞資料収集を行った。 与那国島での調査は主に1)漁業者にGPSを携帯してもらっての一操業における行動観察、2)水産物の流通機構の把握、3)水産関係の儀礼・イベントにおける漁業者の役割、行動の3点について調査を実施した。 調査実施時点で確認できたことは、与那国島におけるカツオ漁の再興を促した企業は撤退していたことから、再産業化には終止符が打たれていた。ところが、漁業者はその状況に柔軟に対応し、改めて同島の主力漁業であるカジキ漁に専従していた。また、実施した調査では与那国島における水産業をめぐる全体の把握につながったことは非常に意義あるものであった。また、この点は条件不利地域という、経済活動としては厳しい地域における同島の生業戦略を明らかにする一歩を築けた点については、申請者が掲げる水産経済学と生態人類学的研究、社会人類学的研究の統合という点において非常に重要なものとなった。 補足調査で実施している本部町ではカツオ漁船団の漁業日誌を入手し分析を進めた。同日誌は沖縄県漁業の変革期における1980年代を網羅するものであり、同地域の漁業史を再構成するだけでなく、沖縄県漁業の歴史を再構成するにあたっても非常に重要な資料的価値があるものである。 沖縄県公文書館での資料収集では、米軍統治期における米国企業のものと思われるカツオ漁の調査資料が発見された。法政大学で実施している新聞資料を含め、歴史的資料として、過去のカツオ漁の再構成に向けて非常に意義あるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本部町での調査は新たな漁業日誌を入手できたことによって、過去のカツオ漁の再構成に関する作業が相当進展した。新たな船団に関しては、思いのほか進展していない。与那国島ではカツオ漁の再興を促した企業が撤退したのは想定外であった。ただ、そのような状況においても漁師は自らの生業戦略を適応させている点がわかった点は評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
与那国島ではカツオ漁は商業漁業としては再び行われなくなってしまったことから、伝統の再興に関する調査は現時点では難しいものとなった。しかし、本部町では順調に進めることとなったため、力点はそちらの方に移しながら、与那国島では衰退に関する調査と漁業者の社会・経済変化に関する適応プロセスに関する調査を実施する。一方、本部町では現在の漁船団に関するデータが圧倒的に不足しているので、次年度は過去の再構成はこれまでと同様な形で実施しながら、現在のカツオ漁に関する調査に力点を置きながら進めていく必要がある。
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