平成26年度は前年度に引き続き、現地調査を中心に活動を進めた。本年度はカツオ漁に特化して調査を行うという意味で、本部町を中心に調査を進めた。本年度は、昨年度からの継続調査である漁業日誌分析をもとに、カツオ漁経験者に聞き取りを行った。また、昨年度は調査がほとんどできなかった新たな漁船団に同行しての参与観察を実施した。 本年度の調査では、1970年台から現在に至るカツオ漁の技術的変化、特に「海を歩く知識」と呼ばれる漁場利用・漁場認識についての様子が明らかになった。ここでは、1980年台初頭に沖縄県に導入された浮魚礁(パヤオ)が、カツオ漁における漁場認識を一新させざるを得ない、大きな出来事であったことが判明した。また、本年度は昨年度には実施できなかった、冬期のカツオ漁の様子も把握することができた。GPSを漁船に設置することで、操業日ごとの航跡を取得し、漁師が帰港するたびに、操業の状況を聞き取りを行った。このことによって、カツオ漁の漁場利用に関して周年レベルで把握することにつながった。 また、カツオ漁の操業において最も重要であろう餌料の獲得についても、その時代変遷が明らかになった。特に、この餌料獲得の時代変遷は、本部町およびその周辺海域の社会環境や自然環境の変化と密接に結びついていることが明らかになった。既存の研究では、沖縄のカツオ漁の衰退については餌料の問題が指摘されているものの、その具体的な様子が明らかにされてこなかった。その点において、本年度に得られた餌料に関するデータは、沖縄のカツオ漁を再構成するにあたり、非常に意義あるものといえる。 以上の点から、カツオ漁においては漁業技術の発展や自然環境、社会環境の変化に極めて影響を受けやすいものの、その状況に対して適応的に操業を実行している様子が明らかに新たなカツオ漁像を描くヒントなった。
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