研究課題/領域番号 |
13J00280
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉松 覚 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 哲学 / 現代思想 / フランス思想 / 脱構築 |
研究概要 |
<①、デリダにおける政治的なものの射程の考察> デリダは最初期の講演からすでに「政治的なものと哲学的なものの共属関係」を指摘していた。実際に政治を論じた晩年の思想と、初期の形而上学を批判していた時期の思想とを結びつけるという3年間の大目標に向けて、昨年度は晩年の法論、政治論を読解することから研究を始めた。これら晩年の著作群において重要な位置を占めるのは「他者」、「責任」というトポスであることが確認された。もちろんこれらの問題系は最初期以来一貫して言われてきたものだが、晩年において顕在化したと言える。そして「他者」という問題に関しては動物論、「責任」という問題に関してはデモクラシー論において詳しいように思われたので、引き続いて②のテーマに移ることとなった。 <②、デリダの晩年の動物論、デモクラシー論の読解> 彼の動物論は死後出版となる単行本『故に私が追う=そうであるところの動物』、以降『故に~』と表記)最晩年のゼミ原稿『獣と主権者』、晩年の対談録『来るべき世界のために』において展開されている。昨年度はこれらの著作を、他者との対面について思索した他の著作と併読した。またデモクラシー論は主に1990年代に多く上梓されている。そこで問題となったのは常に最良の政体としてのデモクラシーは決して現前することはないという「来るべきデモクラシー」という考え方だった。この概念の把握のために初期の時間論、とりわけ差延との比較が必要となった。このため時間論とデリダのデモクラシー論をひきつけて読解した。この論点にかんしては、とりわけマーティン・ヘグルンドの"Radical Atheism"が大きく示唆を与えてくれた。こうして、正義に適う責任をとるために採られる「先送りにすること」という概念をもとにデリダのデモクラシー論を読解したが、そこでジャック・ランシエールやジョルジョ・アガンベンとの理論的比較が必要となり、彼らの著作も併せて読解した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象であるデリダの没後10年にあたる2014年に向けて、学会や研究会での口頭発表を積極的に行う準備をしてきた。具体的には申請者が修士課程で研究していたデリダの初期の思想と、博士課程で研究している晩年の政治的なものを巡るの思想とを接続し、初期から後期にいたる思想の全体像を描くための整備に捧げた。平成25年度に得られた研究成果は平成26年度に口頭発表、論文投稿を通じて公開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究成果を順次公開していく。同時にデリダが晩年に提唱していた「来るべきデモクラシー」という概念の思想史的影響について、デリダ以降の思想家としてジャック・ランシエール、ジョルジョ・アガンベンらのデモクラシー論と比較して、思想史への位置づけをはかる。 また、平成26年度10月よりパリ西大学にて在外研究を行う。受入教官のサンディ氏をはじめ、デリダに直接師事していた哲学者に教えを乞い、欧米のデリダ受容の現在の潮流を知る同時に、デリダのアーカイヴにも赴くなどして、さらに研究を進めるための資料の収集もしたい。
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