研究課題/領域番号 |
13J00302
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
陳 晨 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | フェミニズム理論 / 文学批評理論 / 若手作家 / 女性文学 / 日中比較 / 受容理論 / 翻訳・越境 |
研究概要 |
本研究の目的は主に以下の2点に要約できる。A)、従来、社会運動思想のフェミニズムが文学批評といかに関係づけ語られてきたかについて、1980年代転換期を起点として、日中という二つの受容空間で考察したい。B)、日中フェミニズム批評比較という新天地を開拓しながら、90年代末期から提起され、いまだに解決されていない「フェミニズムの行き詰まり」という課題を再考するための方法的視座を示すことを目指す。以上に述べた研究内容と研究目的を意識して、その達成を実現させるために、平成25年度の作業は、おもにフェミニズムと文学研究の批評的関係を論述することに重心を置きながら、理論の読み直しとテキスト分析という二つの研究方法を用いて展開したものである。具体的に言えば、(1)フェミニズム理論のうち、とりわけ「主体」の問題に焦点を合わせて、「イズム」に内包されるダイナミックな意味の読み返しを試みた。(2)文学批評であるフェミニズム批評のあり方や意義を裏付けるために、「レトリック」の問題を取り上げて、実際にテキスト分析などの方法を通して考察を行った。(1)の問題を解決するために国立国会図書館に三回にわたって訪ね、日本のフェミニズム理論の受容背景に関する資料整理の作業を行った。そのほか、上野千鶴子、竹村和子などのフェミニズム理論家を読み直し、「日本型フェミニズム」の受容状況、特徴をまとめた。その成果は、「Feminismからフェミニズムへ―日本型フェミニズム批評の再考―」(2014年〈第14回中国日本文学研究会年会〉で発表する予定)、「上野千鶴子『家父長制と資本制』を読む―資本主義社会はなぜ女性を解放しなかったのか―」(ゼミ発表済み/論文化中)のなかに整理されている。(2)の問題を解決するために、1980年代以降にうまれの若い世代の女性作家の文学作品に注目し、「男女平等」が達成した後なお残されている課題は、文学テキストを通していかに言語化されているのか、ということについて、「社会学的な視野」からではなく、「レトリック」(引用、メタファー、象徴性)の次元において分析を行った。その成果を、2013年度日本近代文学会春季大会、秋季大会連続で、他大学の若手研究者と手を携えながら「現代の女性作家を問う」(春季)、「現在のフェミニズムを問う」(秋季)というタイルトで発表したのである。また、国際シンポジウム(今年度は中国と台湾)に積極的に参加したことによって、現代日本文学批評状況やフェミニズム理論発展を、国境を超えて超域的な視点から見つめ直す契機を得た一方で、今後本格的に展開する比較研究にも土台を作ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会発表の進度と論文投稿の状況から、平成25年度の研究活動はおおむね順調に捗っていると判断する。また、同世代や同じ分野の研究仲間を確実に増やしたことによって、当初の計画以上に進展した研究内容もあった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究進展に関して、大きな方向としては、おもに比較研究のほうに集中することである。そして、研究の全体的ヴィジョンを、「フェミニズム比較理論史」として位置付けようとすること。そのために、受容と翻訳作業に注目しつつ、日中においてフェミニズムの「土着化」に尽力するフェミニズム理論家たちの、「対話的接触」(一方通行ではない)が実現させるために比較作業を行う。 研究計画の変更につきまして、大きな変更がない。25年度のうちに実施する予定となるアウトリサーチは学会発表の都合によって中止になったが、今年度は実施することになるり。
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