研究課題/領域番号 |
13J00304
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田辺 弘子 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 立位制御 / ロバスト性 / 倒立振子モデル / PD制御 / 間欠制御 / 表面筋電図 / 最適化制御 |
研究実績の概要 |
本研究の目的「バレエダンサーの立位制御メカニズムの解明」に沿って、当該年度は実験による分析的手法とモデルを用いたシミュレーションによる構成論的手法の両面から、以下の2つの研究を行った。 1.つま先立位の関節動揺に貢献する筋活動様式を検討し、筋活動レベルでの個人差を明確にした。バレエダンサーのつま先立位時の関節動揺のパターンは様々な脚ポジション間や個人間で同様の傾向を示す場合が多いことが前年度の研究で明らかになったが、そうした関節動揺を生成する筋活動パターンは、「どの筋を使って関節が動いているか」「筋活動の発生からどれくらいの遅延時間の後で関節動揺が生じるか」に関しては、ダンサー間・様々な脚ポジション間において全く異なる結果であった。このことから、個人差のあるメカニカルな要素が筋活動レベルでの個人差に繋がっている可能性が示唆された。 2.「ダンサー特有の関節協調運動(昨年度に得られた結果)が生じるメカニズム」「関節粘弾性の個人差が関節動揺に及ぼす影響」「立位のロバスト性」の解明を目的として、つま先立位のモデルとして倒立四重振子モデルを構築しシミュレーションを行った。従来の連続的フィードバック制御ではモデルは安定化せず、システムの安定多様体を利用した間欠的フィードバック制御を行うことでモデルが安定化し、生体内で間欠制御が行われている妥当性が高まった。また、粘弾性係数や制御ストラテジーによって関節協調運動パターンやモデルのロバスト性が大きく異なった。このことから、実験で観察された関節協調運動の可塑性の原因として関節粘弾性と中枢神経系の制御ストラテジーの違いがあること、またダンサーは自らの関節粘弾性に応じて適切な制御ストラテジーを獲得している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
間欠的フィードバック制御を用いたシミュレーションによって、世界で初めて4リンクの倒立振子を安定化させることが出来たため。そこから得られた結果から制御メカニズムの解明が進展しただけでなく、バレエの現場において有益な知見も得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
関節協調運動と筋活動様式の関連性についての論文が国際誌に受理されることが期待できる。また、実際にヒトがつま先立ちをしている時に間欠制御をしているのかどうか、さらに筋活動レベルで検討する。これまでに得られたシミュレーション結果を国際会議等でアウトプットし、ディスカッションを行うことで議論を深める。
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