研究概要 |
本年度は, ①豪州におけるジオパーク運動の展開とガバナンス構築に関する研究, ②旅行ガイドブック分析からみた観光地特性に関する研究, ③学校給食を通した地産地消運動の実態に関する研究, ④滞在型市民農園の存立基盤に関する研究, 以上4点を行った。①に関しては, まず当該地域に分布する火山資源の保全・活用実態を把握するために, 豪州における大地の遺産の保全実態に関する資料収集を行い, 併せてジオパーク運営委員および火山博物館職員同行のもとで景観観察を行った。つぎに, ジオパーク運動の展開とガバナンス構築のプロセスを把握するために, ジオパーク運営組織に対する聞き取り調査を実施した。その結果, 1980年代後半よりカナウィンカ地域東部において火山資源を活かした観光振興が図られており, 1990年代後半になるとその活動領域が当該地域西部まで拡大して広域的な観光振興が取り組まれ, 2000年代以降にジオパーク運動へと移行したことが明らかとなった。この成果の一部を日本地理学会春季学術大会で発表し, 学術誌への投稿準備を進めている。②に関しては, 著名な旅行ガイドブックの記載内容とその位置情報をGISを用いて分析することより, シドニー大都市圏の観光地域としての空間特性を検討した。その結果, ガイドブックの記載内容はシドニー市中心部に集積しており, とりわけ公共交通機関からの近接性に優れた場所の情報量が多いことが明らかとなった。この成果の一部は第8回日韓中地理学会議において発表し, 学術誌への投稿準備を進めている。③に関して, 茨城県常総市の学校給食センターおよび地場農産物を供給する生産者に聞き取り調査をもとに, 学校給食をめぐる地産地消運動の実態をまとめた論稿を「地域研究年報」に掲載し, 骨子を日本地理学会秋季学術において発表した。④について, 長野県佐久市における滞在型市民農園の存立基盤について, 施設運営の実態と利用者行動の分析から検討した。この成果は学術誌に投稿中であり, 骨子を第9回韓中日地理学会議にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
約70日間のフィールドワーク実施した結果, ジオパーク運営組織だけでなく火山博物館など関連施股との関係性を構築することができ, ジオパーク運動と地域の対応に係る十分な資料収集と聞き取り調査を実施することができた。2013年度の研究成果は日本地理学会春季学術大会に於いて発表し, 2014年度の方向性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで実施してきた調査内容を踏まえ, 4~5月に補足調査を実施する。オーストラリアにおけるジオパーク運動とガバナンスに関する博士論文を, 今年度中に執筆する。また, オーストラリアにおけるジオパーク運動の展開に関する調査内容を論文にまとめ, 年度内に学会誌に投稿することを方策とする。さらに, 研究成果をInternational Geographical Unionにおいて口頭発表し, 国外の研究者と議論し研究内容を深めていきたい。
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