研究課題/領域番号 |
13J00320
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野木 馨介 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 二酸化炭素 / コバルト / マンガン / 亜鉛 / カルボキシル化 |
研究概要 |
私は本年度、コバルト触媒を用いた炭素-炭素結合形成を伴う二酸化炭素固定化反応の開発に取り組み、酢酸アリルおよび酢酸プロパルギルのカルボキシル化反応が進行することを見出した。 アリルおよびプロパルギル骨格への二酸化炭素導入に伴うカルボン酸合成は、分子内にさらなる修飾が可能な不飽和結合を有するカルボン酸を合成する手法である。しかしながら従来用いられていたGrignard試薬や有機リチウム試薬は官能基許容性に乏しく、さらにアリル金属種やプロパルギル金属種においてしばしば見られる異性化のため、二酸化炭素が導入される位置選択性の制御が困難であった。有機金属種を用いない形式としては、一般的に求電子剤と考えられるアリルエステルや塩化プロパルギルを基質として用い、外部から電子を加えることにタり極性転換を経る反応炉が報告されている。しかし前者では電子源として電解を用いなければならず、特殊な反応条件を必要とするうえに二酸化炭素が導入される位置選択性も満足いくものではなかった。一方後者では還元剤としてマンガン粉末を用いるためより汎用性の高い反応条件と言えるが、1種類の基質しかカルボキシル化は実施されておらず、さらに収率も29%と低いものであった。 本研究では触媒金属としてコバルトを用いることで求電子剤である酢酸アリルおよび酢酸プロパルギルのカルボキシル化反応を達成した。特に酢酸プロパルギルのカルボキシル化反応においては高い官能基許容性を有し、また完壁な選択性でカルボキシル基炉導入されたカルボン酸が中程度から高収率で得られることが判明した。我々は以前にもニッケル触媒存在下、還元剤としてマンガンを用いることで塩化アリールのカルボキシル化反応が常温常圧の二酸化炭素雰囲気下で進行することを見出しており、これらの研究は遷移金属触媒を用い還元剤として亜鉛やマンガンを利用する手法が二酸化炭素固定化反応に有効であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マンガンや亜鉛といった単体金属を還元剤とする二酸化炭素固定化反応を、従来用いていたニッケル触媒のみならず、コバルト触媒を用いた系においても達成することができた。使用可能な触媒金属が増えた事は本手法をさらに拡張できる可能性を示唆しており、大きな意味を持つ研究成果であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究においてニッケルおよびコバルト触媒が酸化的付加を伴う二酸化炭素固定化反応に有効である事が示唆されたため、酸化的付加が進行しうる基質を用いた二酸化炭素固定化反応をさらに探索する。また、ニッケルやコバルト触媒はアルキンやアルケンなどの不飽和成分と酸化的環化を伴いメタラサイクルを形成することが知られており、そこに二酸化炭素を導入することを目指して研究を展開する。
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