研究課題/領域番号 |
13J00321
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
尾花 望 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(PD)
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キーワード | バイオフィルム / クロストリジウム属細菌 / 温度 / 芽胞形成 |
研究概要 |
本研究ではウェルシュ菌をクロストリジウム属のモデル細菌として偏性嫌気性細菌である本属細菌のバイオフィルム形成制御機構を解析することを目的としている。本年度は、本菌が形成する嫌気的バイオフィルム構造を共焦点レーザー顕微鏡によって観察する手法を確立するのと同時に、そのバイオフィルム形態が重要な感染シグナルのひとつである温度変化によって大きく変化することを見出した。ウェルシュ菌は37℃では基質に付着した密なバイオフィルムを形成する一方で、25℃では基質に付着せずに細胞外マトリクスに富んだ疎なバイオフィルムを形成した。走査型電子顕微鏡の結果からも、25℃では特異的な細胞外マトリクスの産生が確認された。この温度依存的バイオフィルム形態変化には内生胞子形成に必須な転写因子SpoOAや毒素調節因子CtrAB、グローバル転写リプレッサーであるAbrBが必須であった。これら3種の転写因子はお互いの発現を調節し合っていることから、複雑な転写発現制御ネットワークの存在が示唆された。 温度変化によってウェルシュ菌バイオフィルムの基質への付着性が大きく変動していることから、付着に重要なIV型線毛の構成成分であるPilA2に着目し、その発現量とバイオフィルム形態について解析した。pilA遺伝子の発現は25℃と比較して37℃で上昇しており、さらに、SpoOA、 CtrAB、 AbrBといった転写因子によって制御されていた。pilA2遺伝子欠損株を作成し、バイオフィルム形成能を解析したところ、欠損株は基質付着性を失っており、付着型の密なバイオフィルムを形成しなかった。以上の結果より、温度依存的なバイオフィルム形態変化はIV型線毛による付着性が関与しており、また、芽胞形成や毒素産生との関連が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クロストリジウム属細菌が形成する嫌気的条件下でのバイオフィルム観察条件を確立した。さらにウェルシュ菌の温度依存的なバイオフィルム形態変化に必要な因子を同定し、本年度の目的は達成された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度ではバイオフィルム形態変化に必要な転写因子CtrAB, SpoOA, AbrBを同定した。今後はそれらの転写因子のターゲット遺伝子をマイクロアレイ等の網羅的解析を用いて同定し、さらにそれらターゲット遺伝子の変異株を作成することによって、本菌の温度応答性バイオフィルム形態変化の詳細を明らかにする予定である。
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