研究概要 |
縦型スピンMOSFETの読み出し用電極とスピン流生成源の両立を目的として, 先ずGe薄膜上への高品質ハーフメタルの形成に取り組んだ. ハーフメタルとGeの(111)面の原子マッチングが極めて良好であることに着目し, 分子線エピタキシー法を用いた結晶成長技術を駆使することで, 室温という極低温で高品質ハーフメタルを得ることに成功した. 作製した積層薄膜構造の面内磁化曲線を測定したところ, 2段のヒステリシスループが観測された. 外部磁場を印加して上部と下部の電極の磁化配置を平行⇔反平行と切り替え可能な積層薄膜構造を実現したことを意味している. つまり, 外部磁場を利用してスピン依存伝導を観測するための最低条件を満たした素子構造の実現である. その後, 上記の積層薄膜構造を縦型スピン伝導素子へと微細加工するプロセス開発に着手した. 電子線描画装置・ドライエッチング装置・原子層堆積装置・電子線蒸着装置などを駆使し, 各プロセス条件の最適化を進め, 縦型スピン伝導素子を試作した. 作製した素子のスピン依存伝導の観測を進めていた際, 素子間で電気伝導特性にバラつきが見られ, ショットキートンネルライクな伝導が観察された素子と, オーミック伝導が観察された素子に遭遇した. このバラつきの原因については, ヘテロ界面の欠陥に起因する強いフェルミ準位ピニング現象の影響, もしくはGe薄膜中にいくらか存在している積層欠陥の影響によるものではないか? と考察している. 現在, ショットキートンネルライクな伝導が観察される素子の歩留まりの向上を同指し, Ge中の欠陥を補償するドーピング技術を導入し, スピン依存伝導の室温検出に向けて研究を推進中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
縦型スピンMOSFETの基本構造となる積層薄膜構造の作製, 縦型スピン伝導素子のナノ微細加工プロセスに関する技術は本年度の早期にほぼ確立した. その後, 作製した素子のスピン依存伝導の観測にも着手し, 今後の研究の指針を明確化した. 従って, 「②おおむね順調に進展している」と評価させていただいた.
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今後の研究の推進方策 |
ショットキートンネルライクな伝導が観察される素子の歩留まりの向上を目指し, Ge中の欠陥を補償するドーピング技術を導入し, スピン依存伝導の室温検出に向けて研究を推進する. また, 提案書記載の研究計画に従って, スピン流を利用したスピンMOSFETの読み出し・書き込み動作に相当する技術の開発を推進する.
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