ニワトリ生殖細胞における胚発生に伴う遺伝子発現変動の解析を行った。昨年度にマイクロアレイを用いて網羅的に解析したニワトリ生殖細胞の遺伝子発現について、ニワトリ胚の生殖細胞から抽出したRNAを用い、リアルタイムPCR法を用いることにより遺伝子発現を解析した。その結果、雌雄の生殖細胞の遺伝子発現は胚発生に伴い変動していることが示された。 次に、1細胞移植法を用いたニワトリ胚の生殖巣生殖細胞の移住能および増殖能を解析した。その結果、生殖細胞の移住能および増殖能は雌雄で異なり、また個々の細胞間で増殖能に差異が存在することが明らかになった。 さらに、ニホンコウノトリおよびホオアカトキ生殖細胞をニワトリ胚に移植することによる生殖系列キメラ胚の作製を試みた。まず、それぞれの胚から分離した生殖細胞を蛍光標識し、ニワトリ2日胚の背側大動脈に移植した。移植5日後、ニワトリ胚の生殖巣および中腎に存在する蛍光標識を示しかつ形態的に生殖細胞の特徴を示す細胞数を測定した。その結果、ニホンコウノトリおよびホオアカトキ生殖細胞はニワトリ胚生殖巣への移住能を有することが明らかになった。また、移植された細胞数に対する生殖巣および中腎への移住率を比較すると、ニホンコウノトリおよびホオアカトキ生殖細胞を移植した場合、ニワトリ生殖細胞を移植した場合に対し、生殖巣への移住率が低くなることが示された。 最後に、メス分化抑制生殖細胞の作製を試みた。ニワトリ雌胚にアロマターゼ阻害剤を添加することにより、卵巣分化を阻害した個体から生殖細胞を単離し、その遺伝子発現および増殖能を解析した。その結果、アロマターゼ阻害剤を添加した雌胚における生殖細胞の遺伝子発現は、同発生段階の雌胚の生殖細胞における遺伝子発現および増殖能とは異なることが示された。このことから、卵巣分化が雌性生殖細胞の性質に影響することが示唆された。
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