研究課題/領域番号 |
13J00364
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
八幡 恵一 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メルロ=ポンティ / 現象学 / 言語哲学 / 表現 / フランス |
研究実績の概要 |
モーリス・メルロ=ポンティの哲学を、とりわけ「表現」という概念に着目して読解し、その思想的な一貫性とあらたな意義を探るというのが、本研究の目的である。全体として、1.「表現」の概念のさらなる探求と深化、2.「表現」の概念にもとづいた後期思想の研究、3.「表現」の概念にかんするベルクソン哲学との関係、という三つの段階において達成される予定である。 本年度に実施されたのは、このうちの2である。すなわち、「表現」の概念について、おもに初期と中期の思想を中心に研究をおこなった前年度までの成果をふまえ、後期(1950年代後半から1961年まで)の思想におけるこの概念の役割を探求するというのが、本研究で2014年度に予定された課題である。 この課題は、とくに〈理念性の形成〉と〈弁証法〉という二つの問題を軸として進められ、これらと表現の概念の関係を明らかにするという方向で、理論的にはほぼ達成された。 まず理念性について、初期のいわゆる〈知覚の現象学〉では、その重要性が強調されることは少なかったが、中期から後期にいたって、知覚と言語の関係が重視されるようになると、知覚されたものから理念的なものがいかにして形成されるかを問う必要が生じ、そのなかで、表現の概念に決定的な役割があたえられる。表現の働きは、理念性の形成にも寄与しており、その関与の仕方を理論的に特定することができる。 つぎに弁証法については、本研究が掲げる〈自己を現実化する行為としての表現〉という考えが、ヘーゲル的な弁証法の概念に関係することは明白であり、表現=弁証法の問題をつうじて、中期から後期への道のりをたどりなおす作業が可能である。 以上は、いずれもメルロ=ポンティの後期思想の解釈にあらたな光をあてる研究として、重要かつ意義のあるものと自負している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画は支障なく進行している。しかし今年度にかんしては、研究に理論的な進展はあったが、予定していた海外での資料調査をおこなえず、最終的に論文等のかたちで成果をまとめることができなかった。今後、調査をおこない次第、次年度以降の課題とあわせて公表していく。
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今後の研究の推進方策 |
計画に変更はなく、次年度は予定どおり、表現の概念を中心とするベルクソン哲学との関係について研究をおこなう。また前年度と本年度に残された課題についても、順次発表していく。
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