研究課題/領域番号 |
13J00376
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡田 貴憲 北海道大学, 大学院文学研究科, 特別研究員DC2
|
キーワード | 和泉式部日記 / 和泉式部物語 / 諸本 / 本文 / 異文 / 注釈 |
研究概要 |
1、『和泉式部物語』自作・日記説の一根拠とされてきた同作品の末尾本文(跋文)について、従来の解釈がいずれも誤っていたことを用例の検討を通して指摘し、同作品の成立事情に議論の余地が残されていることを明らかにした。成果については『国語国文研究』第143号に公表した。 2、従来『和泉式部物語』の最善本とされてきた三条西家本『和泉式部日記』の本文について共通祖本仮説の見地から検討を行い、同本の独自異文が他系統(寛元本系統・応永本系統)本文からの意改と考えられることを指摘した。成果については『國語國文』第82巻8号・『古代中世文学論考』第29集・『国語国文研究』第145号(印刷中)に公表した。 3、諸本の中で三条西家本のみが持たない寛元本系統・応永本系統の"異文"について検討を行い、これまで単に説明的・冗漫な語句とみなされてきたこれら"異文"が、実際には独自の意味を有して表現世界の形成に確固たる役割を果たしていることを明らかにした。成果については『國語國文』第83巻5号(印刷中)に公表した。 4、寛元本系統・応永本系統・混成本系統の写本10点・板本2点について、宮内庁書陵部・国立公文書館・法政大学文学部・京都大学文学部・滋賀大学附属図書館・天理大学附属天理図書館・島根大学附属図書館・篠山市立青山歴史村において閲覧・調査を行い、うち写本6点・板本2点については画像を撮影した。調査の結果、応永本系統・混成本系統の成立に関する先行研究の大部分について修正の必要なことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三条西家本における本文改変の証明、および寛元本系統・応永本系統における表現世界の解明については、それぞれ全国誌への成果公表を達成しており、当初の目的通りに推移している。応永本系統・混成本系統の諸本調査についてはなお継続の必要があるものの、すでに閲覧・調査済みの重要な写本・板本から新たな知見を得ており、成果の公表に向け支障はないものと目される。
|
今後の研究の推進方策 |
応永本系統・混成本系統の諸本調査の完成に向け、国立国会図書館・九州大学附属図書館・大阪府立中之島図書館・刈谷市中央図書館・飛騨高山まちの博物館・尾鷲市立中央公民館・三康図書館において閲覧・調査を行い、可能な限り画像の収集にも努める予定である。得られた成果については学術雑誌もしくは口頭発表での公表を計画している。また寛元本系統・応永本系統の表現世界の解明については、『國語國文』第83巻5号に公表済みの成果と同様の見地から検討を進め、引き続き主要な全国誌への公表を目指す。
|