平成26年度は、これまでの調査・研究内容を博士論文「香川県伊吹島における出部屋の存続と閉鎖のメカニズム―社会および共同体の変化に関連づけて―」にまとめたほか、研究発表やアウトリーチ活動を積極的に行った。 博士論文では、産屋の盛衰と女性のケガレの変容の影響関係を具体的に解き明かした。主な対象地域としては香川県伊吹島を選定したが、平成26年度の研究計画に入っていた寺社周辺の産屋とケガレに関する調査の結果についても、本文中で多く言及することができた。 また、第15回香川母性衛生学会学術集会において特別講演「産屋の近代史―伊吹島出部屋の存続と閉鎖をめぐって―」を、桃山学院大学においてゲスト講義「日本における女性観と女性差別:女性のケガレから考える」等を依頼され、伊吹島の産屋を中心に全国の産屋が近代以降どのように存続してきたのかということをケガレ観の変容に関連づけて解説した。 平成26年度みんぱく若手研究者奨励セミナーにおける発表「出産をめぐる地域のつながりと船霊信仰―香川県伊吹島を事例として―」では、伊吹島において女性のケガレを規定する重要な要素である船霊信仰と産屋の盛衰との関連性を具体的に明らかにした。また、関連分野の書籍に対する書評も行うなど、幅広い視点から研究動向を把握するように努めた。 以上のことから、平成26年度における研究の進捗は非常に順調であり、十分な実績を残すことができたといえる。
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