研究概要 |
1. 小角中性子散乱と動的光散乱による立体規則性を変えたPNiPAMの構造解析 動的光散乱及び小角中性子散乱(SANS)を用いて、立体規則性がPNiPAM水溶液の相分離プロセスに与える影響を調査した。SANS測定より、メソ比率が増加するにつれて疎水性が増すことが明らかとなった。この結果は、メソ体の方がラセモ体よりもより疎水的であるという、二量体や三量体のシミュレーション結果とも一致する。[Katsumoto, Y. ; et al., J. Phys. Chem. B, 2010, 114, 13312-13318, and Autieri, E., et al, J. Phys. Chem. B, 2011, 115, 5827-5839] さらにメソ比率は単一の高分子鎖の静的な形状や収縮挙動には影響を与えないが、高分子鎖どうしの凝集挙動に大きな影響を与えることが明らかとなった。メソ比率が低い場合は相分離点付近で急激に相分離を起こす一方で、メソ比率が高い場合には徐々に凝集していく様子が観察された。ここから立体規則性を調整することで、PNiPAM水溶液の相分離挙動は制御できることが明らかとなった。 2. 小角中性子散乱による高分子網目内部の不均一性の観察 Tetra-PEGゲルとはダイヤモンド型の高分子網目を有する均一ゲルである。本研究では二種類の欠陥をゲル内部に導入し、欠陥が網目構造に与える影響を調査した。第一に高分子濃度を減らした上で、そのゲル化過程に対して時分割SANS測定を行った。するとφ<φ^*ではゲル化とともに散乱強度と相関長が大きくなったものの、φ>φ^*ではほとんど変化しなかった。ここでφとφ^*はそれぞれ高分子の体積分率と重なり合い濃度における高分子の体積分率である。次に系統的に結合欠陥を導入したTetra-PEGゲルを作製し、水中で膨潤させることで不均一性をより拡張させた。SANS測定よりas-prepared状態では散乱関数はほとんど変化しなかったものの、swollen状態では結合欠陥の増加とともに系統的に散乱関数が変化した。このような一連の実験結果を基にして、結合欠落と不均一性の相関をシンプルな模式図を用いて検討した。
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