1. 均一網目構造の形成過程における反応動力学に関する研究 アミン末端と活性エステル末端をそれぞれ有する二種類の四分岐PEG (Tetra-PEG)の架橋反応速度を分光法を用いて調査した。反応速度定数(kgel)のプレポリマーの分子量依存性と濃度依存性を調べたところ、kgelはプレポリマーの分子量や濃度に依存せず、1本鎖PEGの反応速度定数に一致することを見出した。またkgelは一般的な拡散律速反応やラジカル重合の架橋反応よりも小さいことが判明した。ここからゲル化反応は拡散律速ではなく、反応律速であることを見出した。それゆえに、反応中にプレポリマーは溶液中を十分に拡散することができ、均一な混合されることが示唆された。均一なゲルを得るためには、反応律速系になるように反応末端を選ぶ必要があることが示唆された。
2. 親油性高分子電解質ゲルの構造解析 親油性高分子電解質ゲルは北大佐田研で合成された、低極性溶媒でも大きく膨潤することができるゲルのことである。このゲルはTFPB-とTBA+をpoly (octadecyl acrylate) (pODA)に導入することで作製される。本研究ではジクロロメタン中における親油性高分子電解質とゲルの構造をDLSとSANSによって調査した。SANS測定より、pODAは半径1.5nmで長さが14nmの剛直な棒状分子であり、荷電基を導入しても構造に変化がないことが判明した。またジクロロメタン中ではpODAの第2ビリアル係数は正であり、良溶媒であることが判明した。DLS測定からは荷電基の導入により、1.遅い拡散の出現、2.ゲル中における協同拡散定数の増加、3.浸透弾性率の増加、といった高分子電解質に特徴的な挙動を観察することができた。これらの結果はジクロロメタン中でイオン対が解離し、高分子電解質として働いていることを示している。pODAが良溶媒であること、そして解離可能なイオン対の導入により、このゲルが高い膨潤能を有することが結論付けられた。
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