研究概要 |
線虫を用いた遺伝学的解析から、インスリンシグナル伝達経路の最下流に位置するフォークヘッド型転写因子FOXOは長寿命や抗老化作用に関与することが明らかとなっている。しかしながら、決定的な下流の長寿遺伝子や分子メカニズムは未解明である。本研究室では、DNA損傷の蓄積が老化の一因であることに着目し、DNA損傷とFOXOの関連を検証し、これまでに4つのFOXOファミリー(FOXO1, FOXO3, FOXO4, FOXO6)の中でFOXO1のみが紫外線に対して保護的に働くこと、またこの現象はDNA合成期(S期)で特異的に見られることを明らかにした。さらに、当研究室では、FOXO1DNA損傷応答に関与する因子と複合体を形成していることを見出した。本研究では、「転写因子FOXO1がDNA修復因子と相互作用することで直接的にDNA損傷応答を制御する」という作業仮説を立て、その分子メカニズムや抗老化作用との機能的相関の解明を目的として検証を進めた。紫外線照射後の細胞を分画し、細胞質と核におけるFOXO1のタンパク量を検証したところ、紫外線照射後FOXO1は急激に核内に移行した。次に、FOXO1の直接的なDNA損傷応答への関与を検証するため、紫外線によって生じる損傷DNAとタンパク質の相互作用を検証した。既存のS期における紫外線DNA損傷応答因子は損傷DNAと相互作用を示し、それらの因子とFOXO1は相互作用を示した。興味深いことに、FOXO1をノックダウンした細胞において、その相互作用が減弱することを見出した。これらの現象は、FOXO1がDNA損傷応答因子と複合体を形成することで、損傷部位で機能することを示唆している。また、FOXO1のDNA損傷応答における機能と抗老化作用との相関を検証する為に、FOXOとDNA損傷応答因子の遺伝子欠損線虫やノックダウン系を構築した。
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