研究概要 |
本研究の目的は, 日本人英語学習者の文脈内語彙学習に焦点を当て, 推論による未知語処理を通して記憶される語彙情報が, どのようなプロセスを経て知識として体系化されるのかを明らかにすることにある。1年目の研究となるH25年度は, (a)英文読解中に未知語推論が起こる条件, (b)文脈情報と未知語の意味的関連度が語彙習得に与える影響, および(c)推論された意味と単語の形式情報とが結合する過程を明らかにするための実証実験を行った。 研究(a)では, 日本人英語学習者は文脈の制約に敏感であり, 未知語の意味を特定する手掛かりとなる文脈の位置に関わらず未知語推論を行っていることが明らかとなった。この結果は2つの追試でも再現され, 文脈の制約が強い場合には未知語推論が行われること, および制約の強い文脈情報が目標語の後ろに位置する場合には推論の難しさが増すことが示された。 研究(b)では, 文脈情報と未知語の意味的関連度が語彙学習の成果を予測するのかを明らかにするため, 潜在意味解析を応用した実験を行った。その結果, 文脈との意味的関連度が低い目標語ほど, その意味・語法は学習されにくく, そのような阻害効果は文脈を用いた語彙学習を普段から行わない学習者に対して顕著に見られることが分かった。 研究(c)では, 日本語での記銘・英語での記銘・記銘指示なしという読解条件下で, 未知語を含む英文を読解した後に語形情報の再認課題を行うことで, 語形情報の記憶へのアクセス可能性を調べた。実験の結果, 未知語の意味が理解されると語形情報へのアクセス可能性が低下するものの, 学習者の目標言語である英語での記銘を行うことでアクセス可能性の低下を防ぐことができることが示唆された。
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