研究課題
本研究の目的は,日本人英語学習者の文脈内語彙学習に焦点を当て,推論による未知語処理を通して記憶される語彙情報が,どのようなプロセスを経て知識として体系化されるのかを明らかにすることにある。平成26年度は,(a)未知語の意味が英文読解中の推論により特定され,推論された情報が心内に符号化されるかを明らかにするための事象関連電位実験,および(b)潜在意味解析により数値化された単語―文脈間の意味的類似度が意図的な語彙学習の成果を予測するかの実証実験を行った。研究(a)では,未知語に対して惹起されるN400の性質を利用し,文脈情報に基づく推論により未知語の意味が特定されるかどうかを検討した。さらに,同じ未知語を(1)意味的に正しい形で使用されている文と(2)意味的に通じない形で使用されている文の中で再提示し,推論された情報が心内に符号化されているかどうかを検証した。実験の結果,日本人英語学習者は読解中であっても,手掛かりの多い文脈において未知語の意味を即座に推論できることが明らかとなった。さらに,推論された情報は心内にある程度符号化されており,別文脈への知識の適用が可能であることが示唆された。研究(b)では,目標語と文脈間の意味的類似度が異なる項目を複数用意し,日本人英語学習者に目標語の意味・用法を意図的に学習させた。実験の結果,文脈を上手く語彙学習に利用できない学習者であっても,単語―文脈間の意味的類似度が高い場合には文脈情報を活用して目標語の意味・用法を学習できることを明らかにした。しかし,意味的類似度が低いと,文脈情報を利用できる学習者と比べて語彙学習の成果は著しく低下することが示された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通りの進捗が見られ,研究成果は学会発表や査読論文において一定の評価を得ている。
今後は本研究に関わる発展的課題に着手する。得られた成果については学会や論文投稿という形で発表し,外部機関による客観的な評価を確認しながら計画を進めていく。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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