研究実績の概要 |
Ti8O8(OH)4クラスターから成る有機金属構造体(MIL125, Ti8O8(OH)4・bdc6 [bdc = terephthalate])をTiO2担体のモデルとして利用するために含浸法で調製したCuO担持MIL125は、CO選択酸化(PROX)触媒に高活性であったがCuO担持に伴う結晶構造変化のため触媒のモデル構造が不明瞭であった。 X線回折(XRD)及びフーリエ変換赤外分光法(FTIR)解析から、元のMIL125がもつTi8O8(OH)4・bdc2の層構造を維持したまま、その層をつないでいる残りのbdc4がCu種に置き換わった、無機リンカーを含む新規有機金属構造体が形成されていることが推定された。さらにX線吸収微細構造(XAFS)解析により、Cu種は2つのCu(OH)4平面四角形が折れ曲がってつながったCu2(OH)6だと示唆され、最終的な構造は{Ti8O8(OH)4・bdc2・[Cu2(OH)6]4}だと分かった。ここで形成されたTi8O8(OH)4-Cu2(OH)6の界面がPROX活性サイトと示すことに成功した。 また、固相還元法によりMIL125の構造を維持したままCuO担持MIL125を調製する方法を開発した。XRD, XAFS, 透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、得られた触媒は、1.7 nmのCuOナノ粒子がMIL125中に分散された構造であることが分かった。MIL125の細孔径は1.3 nmであるため1.7 nmのCuO粒子は局所的にMIL125の構造を歪めることで導入されていることが考えられた。この触媒のPROX活性は含浸調製のものと比較して3%の活性しか示さなかった。このことからも、含浸調製で得られたCuO/MIL125で選択的に得ることのできるTi8O8(OH)4-Cu2(OH)6界面の形成がPROX活性に重要であることが分かった。
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