研究課題/領域番号 |
13J00499
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺川 剛 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | タンパク質 / 粗視化シミュレーション / 転写因子 / p53 / DNA / 探索機構 / 核内 / 分子動態 |
研究概要 |
全原子モデルの静電相互作用を、近似的に再現するように、分子表面に存在する粗視化ビーズに電荷を分配する手法を開発した。自由度を減らしたことに付随するオーバーフィッテイング問題を解決するために、フィッティングの際に、電荷があまり大きくなり過ぎないようにするための拘束を課すという工夫を施した。開発した手法を用いて電荷が分配された粗視化タンパク質モデルで、シミュレーションを行った結果と、全原子モデルでシミュレーションを行つた結果はよく一致することを確認した。更に、この手法を16個の転写因子のDNA結合ドメインのシミュレーションに応用した結果、DNAに特異的に結合するタンパク質表面と、DNAに非特異的に結合するタンパク質表面とが、大きく異なる場合があるということを明らかにした。 p53と1個のヌクレオソームを含む系のシミュレーションを行った。解析の結果、p53は全てのDNAを均等に探索せず、ヒストンコアタンパク質が結合していないDNA領域でなおかつダイアドの付近を重点的に探索することが明らかになった。p53の特異的結合領域は、ダイアドの付近に多いという報告もあり、関連性が示唆された。また、この領域は他のDNA結合タンパク質の結合領域でも有り、排他的に競合する機構について、今後のより詳細な研究が期待される。 p53と20個のヌクレオソームを含む系のシミュレーションを行った。解析の結果、ヌクレオソーム濃度が低い時、p53はクロマチン内を素早く拡散することができるが、高い時、拡散が遅くなることが明らかになった。一方、ヌクレオソーム濃度が低い時、p53周りの局所的なDNA濃度が小さくなるので、探索は遅くなる可能性があることが示唆された。このような巨大系において、拡散という長いタイムスケールのダイナミクスを探求することができるのは、粗視化シミュレーションならではである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヌクレオソームの配置をランダムにして、20個のヌクレオソームを含む系を構築することによって、予定より早く、クロマチン内で拡散するp53のシミュレーションを行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
クロマチン内でのp53の粗視化シミュレーションの結果を裏付けるための実験結果が必要である。今後は、今年度シミュレーションを行った系に対応する系の実験を行うことにより、結果を比較する予定である。また、p53以外の転写因子の全体構造モデリングについても、構造情報の蓄積を待ちつつ、ホモロジーモデリングを駆使して進めていく予定である
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