研究概要 |
本年度は当初の計画通り、複数の共役系を有する分子内架橋型環拡張ポルフィリンの合成、およびポルフィリン-ヘキサフィリンハイブリッド型多量体の合成を検討した。 前者の研究においては、m-フェニレン、2,5-チエニレン、2,5-ピリレン架橋された26πヘキサフィリンを合成し、その物性評価を行った。各種スペクトル測定の結果、m-フェニレン架橋ヘキサフィリンは26π共役系に由来する物性のみを示すのに対し、2,5-チエニレン架橋ヘキサフィリンは、26πヘキサフィリンのみならず、18πチアポルフィリンの共役の寄与が同時に存在することを明らかとした。また2,5-ピリレン架橋ヘキサフィリンは、磁気物性としては18πポルフィリンに由来する物性を示したが、過渡吸収スペクトルの測定結果から、励起状態では従来の芳香族ポルフィリン類縁体とは全く異なる挙動を示すことが確認された。 後者の研究においては、メゾーメゾ結合ポルフィリン-ヘキサフィリン-ポルフィリンハイブリッド三量体の合成法を確立し、その多量化および縮環反応に成功した。多量化反応は収率において改善の余地は存在するが、現時点で対応する12量体までを単離することに成功している。縮環反応においては、従来の三重縮環ポルフィリン多量体に用いられている条件、すなわちジクロロジシアノベンゾキノンとスカンジウムトリフラートを用いることにより、対応する三重縮環ポルフィリン-ヘキサフィリン-ポルフィリンハイブリッド三量体を得た。この三重縮環ハイブリッド三量体はおよそ1900nm付近に鋭い極大吸収を有し、この値は従来の三重縮環ポルフィリン多量体のものと比較すると、およそ6量体のそれに匹敵する。したがって、このような三重縮環多量体の最大吸収波長の長波畏シフトという点においては、本研究で用いたヘキサフィリンユニットは、およそポルフィリンユニット4個分の働きをしていることが示唆された。
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