研究課題/領域番号 |
13J00514
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森 裕貴 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ポルフィリン / 環拡張ポルフィリン / ヘキサフィリン / らせん共役 / 縮環 / 金属錯体 / 近赤外色素 |
研究実績の概要 |
採用2年度目は当初の計画からさらに研究を発展させ、1)ポルフィリンーヘキサフィリンーポルフィリン三量体の合成と物性、2)非環状らせん共役系を有する26πヘキサフィリンの合成と物性、3)近赤外領域に強い光吸収を示す5,20-ピロール置換26πヘキサフィリンの金属二核錯体の合成と物性 に関して研究を展開した。以下に各項目に関して概要を示す。 1)ポルフィリン–ヘキサフィリンハイブリッド多量体の合成法をさらに改良し、当初は困難であった、電子求引性の置換基のポルフィリンユニットへの導入を可能にした。またこの際に用いた合成手法は、ポルフィリンのみからなる多量体への応用も可能であることを見出し、これまでの合成法を一新することが期待される。 2)当初計画していたアヌレノアヌレン型ヘキサフィリンの合成の際に得られる副産物から研究をスタートした。その副産物は分子内に特徴的ならせん型の部分構造を有しており、適切な置換基を導入することにより、らせん型の電子系の寄与を増大させることができるのではないかと考えた。検討の結果、置換基としてはα—オリゴチエニル基で最も良い結果を得ることができた。合成したヘキサフィリンは、通常の26πヘキサフィリンの共役系に加えて、2つのオリゴチエニル基とヘキサフィリン骨格の半分にわたって、非環状のらせん型共役系の寄与が存在することを明らかとした。 3)新しい金属錯体のモチーフとして、メゾ位の置換基としてピロールを有するヘキサフィリンをデザインした。ピロールはアミン型窒素を有しているため、金属原子に対して窒素で配位した際は1価の配位子として機能するため、ヘキサフィリンに配位させることができる金属原子の種類を大幅に増やすことができると考えられた。実際に種々の金属原子を配位させることが可能であり、それら金属錯体は近赤外領域にわたって強い光吸収を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者は申請当初の計画を年度中頃におおよそ終了し、得られた新しい知見をもとにさらに研究を進展させた。具体的には上記の2)非環状らせん共役系を有する26πヘキサフィリンの合成と物性、3)近赤外領域に強い光吸収を示す5,20-ピロール置換26πヘキサフィリンの金属二核錯体の合成と物性といった研究テーマを遂行したが、他の研究課題も順調に進行しており、次年度ではさならる進展が期待できる。 これらの研究の進展は論文の発表数(原著論文7報、うち申請者が筆頭著者であるものが3報)と国際および国内学会での発表数(申請者本人の発表3件)に如実に現れており、申請者の研究は(1)当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
π共役系の化学という観点から、本年度の研究で得られた知見は非常に興味深いものではあるが、すべての研究およびその成果は、特殊な基質である環拡張ポルフィリンに基づいており、一般性に乏しいという欠点が存在する。申請者の研究課題の表題にもなっている環拡張ポルフィリンではあるが、この一般性という観点から、その化学の狭さを申請者は痛感した年度でもあった。そのため次年度はこの課題を解決すべく、得られた知見をより一般的な基質であるポルフィリンに還元し、よりインパクトのある研究へと展開する。
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