研究課題/領域番号 |
13J00516
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
堀江 正樹 筑波大学, 医学医療系, 特別研究員(PD)
|
キーワード | Nrf2 / マイオカイン / NAFLD / 酸化ストレス |
研究概要 |
過剰な脂肪蓄積は、組織の構造や機能に異常をきたし、炎症状態を誘発することで、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)等の器官障害を引き起こす。肥満やNAFLDでは、肝臓のみならず、骨格筋での脂肪沈着症も合併していることが知られる。骨格筋における脂肪沈着は、骨格筋の機能不全を引き起こし、運動能力の低下を招く。NAFLDに代表する肥満を伴う疾患は、食事・運動療法以外にコンセンサスが得られた治療法が未だ確立されていないなか、運動能力の低下は、疾病の増悪、予後に関連する大きな問題となる。そのため、これらの治療・予防方法の確立のために、骨格筋における脂肪沈着の予防および骨格筋機能を維持するための方法の確立が早急に求められている。我々は、ストレスセンサーである転写因子NF-E2related factor2 (Nrf2)の肝臓での発現増加が、NAFLDの病変形成に対し抑止的に働くことに注目し、骨格筋においてもNrf2は同様の働きをもつのではないかと考えた。また近年、骨格筋より分泌されるタンパク質群である「マイオカイン」が、脂質代謝を含む全身の代謝状態を制御していることが報告されている。そこで本研究では、Nrf2KOマウス、Nrf2過剰発現マウスであるKeaplKDマウスを用いて、in vivo、in vitroにて、Nrf2が骨格筋の脂肪蓄積およびマイオカイン産生能にどのような影響を与えるかについて検討する。本年度の研究では、野生型マウス、Nrf2KOマウスおよびKeap1KDマウスの間で運動能力に差異があること。各マウス間で運動による脂肪肝の改善効果に差異があることが確認された。そして、その要因として、各マウス間での骨格筋分泌タンパク質(マイオカイン)の発現差異が関与している可能性が示唆された。しかしながら、その機序を明らかにするまでには至っていない。そこで今年度の研究成果に基づき、次年度もひき続きNrf2の骨格筋内での働きおよび、マイオカインの産生に与える影響についての解析を行い、Nrf2を標的とした、肥満関連疾患の予防および、骨格筋機能を維持するための方法の確立を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、野生型マウス、Nrf2KOマウスおよびKeap1KDマウスの間で運動能力に差異があること。各マウス間で、運動による脂肪肝の改善効果に差異があることが確認された。そして、その要因として各マウス間でのマイオカインの発現差異が関与している可能性を示す結果が得られている。これらの結果は、Nrf2が骨格筋の脂肪沈着メカニズムおよび骨格筋機能に与える影響を解析する本研究の根幹をなすデータであり、今後の実験計画の見通しも通っていることから、おおむね順調に進展していると評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、野生型、Nrf2KOおよびKeap1KDマウスの、筋衛星細胞の初代培養細胞と、筋芽細胞株C2C12を用いて、電気刺激における強制収縮刺激時に分泌されるマイオカインのプロテオーム解析(セクレトーム解析)を行い、Nrf2が運動刺激時のマイオカイン産生へもたらす影響を網羅的に解析する。その後、発現変化のあったタンパク質に対して、主にin vivoでの機能解析を行い、標的マイオカインが骨格筋および、肝臓の脂肪沈着に対してどのような影響をもつかについで明らかとする。このように、Nrf2の骨格筋内での働きおよび、マイオカイン産生に与える影響を明らかとすることで、骨格筋内のNrf2を標的とした、肥満関連疾患に対する新たなる治療方法の確立を目指す。
|