研究概要 |
本研究では, 超大口径シリコンウェーハをはじめとする次世代デバイス基板の研磨加工において, 基板表面全体における平坦性や基板表面内微小領域における平坦性, またデバイス製造時の歩留まりに非常に強く影響する基板表面エッジ部の平坦性の向上を目的に, それら平坦性の向上に有効な研磨パッドの開発を目指している. 本年度は, 現在量産プロセスにおいて最も重要な課題とされている基板表面エッジ部の平坦性向上に有効な研磨パッド特性を明らかにするため, まず研磨加工における工作物エッジ部近傍の形状創成メカニズムすなわち工作物エッジ部近傍の除去量分布の生成メカニズムの検討を行った. 研磨加工における工作物除去量特にエッジ部近傍における除去量の分布は, おもに加工面に生じる接触応力分布により決定される. そこで, 研磨パッドの弾性特性および粘弾性特性が加工面接触応力分布に及ぼす影響について, 構造解析を用いて詳細な検討を行った. そして, その結果にもとづき工作物エッジ部近傍の形状創成モデルを新たに提案し, エッジ部の平坦性に対しては, 工作物の沈み込み量を決定づける研磨パッドの弾性特性が強く影響することを明らかにした. 実際に研磨パッドの弾性特性の評価試験およびシリコンウェーハの研磨加工実験を行い提案モデルの妥当性を示すとともに, 新たな研磨パッドの設計を行った. また, 研磨パッドの弾性特性を研磨機上ですなわち加工時により近い状態で評価可能な押し込み試験機を新たに設計・製作し, 提案モデルのさらなる精度向上を図った.
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今後の研究の推進方策 |
実際に新たな研磨パッドの開発を行うためには, 研磨パッド材料の特性特に加工時に発現する特性をより詳細に把握し, それらが接触応力分布に及ぼす影響を明らかにすることで, これまでに構築した工作物エッジ部近傍の形状創成モデルをさらに高精度化することが必須である. そこで, 本年度に製作した押し込み試験機による研磨パッド材料の特性評価および構造解析を用いた検討を行い, 工作物エッジ部近傍の形状創成メカニズムについてより詳細に検討することで, 研磨パッドの具体的な設計指針を得る. そして, 研磨パッドの試作, 特性評価および加工実験による加工特性評価を繰り返し実施することで新たな研磨パッドの開発を行う. また, 基板表面全体における平坦性が劣化するメカニズムの解明を目指す. 具体的には, 接触応力分布と同様に工作物除去量に強く影響を及ぼす加工面の温度分布に着目し, 研磨加工実験を通して加工面に温度分布が生じるメカニズムを特定するとともに, 研磨パッドの表面構造が温度分布に及ぼす影響を検討し基板表面全体における平坦性向上に有効な表面構造を明らかにする.
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