(1)外生菌根菌群集の時間変化、地理的分布パターン 本邦亜熱帯シイ林において、2年間に渡り外生菌根菌群集の調査を行ったところ、種レベルでは3か月から6か月という時間スケールで群集の入れ替わりが起こること、この群集の時間変化には、時間による気候要因(気温・降水量)の変化よりも、環境の変化に依らない純粋な時間経過における群集変化の両者の影響が大きいことを明らかにした。次に、スダジイと共生している外生菌根菌相が、地理的にどのような分布パターンをもっているのかを明らかにするため、沖縄県石垣島から、新潟県佐渡島までの13か所のスダジイ林において外生菌根菌群集の調査を行った。その結果、種多様性は温度に伴い減少すること、群集組成は気候要因(気温・降水量)と空間的な距離の影響を受け変化することが明らかになった。群集組成は特に、空間的距離の影響が強く、地理的な分布パターンには、ある種にとって好適な環境があっても到達できないという分散制限が影響することが示唆された。 (2)外生菌根菌の基質利用能力の違いが宿主植物の養分獲得に与える影響の解明 無菌状態のスダジイ実生に、野外で採集した腐植層とミミズの糞塊をそれぞれ接種することで、基質中の菌根菌をスダジイの根に定着させた。外生菌根菌は、スダジイ実生から12種、感染源として用いたFH層・糞塊中から24種がそれぞれ検出された。このうち9種がスダジイ菌根及び基質中から共通に検出された。実生に形成された外生菌根菌のうち、感染源の違いによって検出頻度に差が見られた種がいたことから、林床基質の違いは外生菌根菌群集に影響を与えうる要因であることが示唆された。一方、外生菌根菌群集の違いと、宿主の生長量には有意な関係が見られなかったことから、外生菌根菌群集は宿主の生長という機能においては、種が異なっても類似の機能を果たすという機能的冗長性を持つことが示唆された。
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