今年度はケルコゾア生物の培養株の収集を目的として沖縄県宮古島でサンプリングを行い、クロララクニオン藻に最も近縁な従属栄養性の原生生物であるMinorisa minutaの培養株を確立した。 また予定された研究計画に基づき、これまでに確立した培養株について分子系統解析及び微細構造観察を行った。昨年度から引き続き研究を行っている新奇ケルコゾア生物の培養株であるSRT122株について、透過型電子顕微鏡を用いた詳細な微細構造観察によって鞭毛装置の立体構造を明らかにした。本培養株については、これまでに行った分子系統解析および光学顕微鏡観察の結果も合わせて原著論文を準備中である。 以前に確立した従属栄養性原生生物の培養株SRT404株について、その形態的特徴からこれまで所属不明の原生生物として扱われてきたRhabdamoeba marinaであると同定した。本培養株については昨年度に行った分子系統解析及び微細構造観察の結果を合わせて現在原著論文を準備中である。 環境配列クレードの一つであるnovel clade 4に属する新奇ケルコゾア生物の培養株SRT104株についての原著論文がJournal of Eukaryotic Microbiology誌に掲載され、ケルコゾア門テコフィローサ綱の新属新種、Trachyrhizium urniformisとして記載された。本研究によってnovel clade 4の実体が初めて明らかとなり、ケルコゾア門の多様性の理解に貢献した。
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