研究課題/領域番号 |
13J00588
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
作道 直幸 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 特別研究員(PD)
|
キーワード | BCS-BECクロスオーバー / 冷却原子気体 / 量子クラスター展開法 |
研究概要 |
(1)本年度は主に、T. D. LeeとC. N. Yangが1958年に開発した量子統計力学のクラスター展開の方法を用いて、冷却フェルミ原子気体のBCS-BECクロスオーバーの解析を行った。その結果として、BCS-BECクロスオーバーの相互作用が弱い極限(BCS 極限)と強い極限(BEC 極限)における超流動相転移温度がLee-Yangの方法を用いて正しく導出できることを示した。また、NozieresとSchmitt-RinkのBCS-BECクロスオーバー理論と、Lee-Yangの方法の関係を明らかにした。クラスター展開はBCS-BECクロスオーバーの解析に広く用いられているが、それらの研究は高温領域に関するもので、本研究のように低温の超流動相転移温度まで記述する試みはほとんどなされていない。また、本研究は、ユニタリティ極限におけるBEC-BCSクロスオーバーの問題を解明するための準備研究と位置付けられる。 (2)また、フェルミ多体系の協力現象に対して少数系(二、三、四体系など)の自由度が与える影響を調べる研究の一環として、二次元に閉じ込められたヘリウム3の気液相転移に関する研究を立ち上げた。この系は近年実験的な進展が著しく、本研究課題を実験と比較しながら進めるのにふさわしい系だと考えられる。二次元のヘリウム3は二体系で束縛状態を持つが、三体系でも束縛状態を持つかどうかは知られていない。本研究では、三体系も非常に浅い束縛状態を持つことを精密な数値計算によって明らかにした。 (3)さらに、冷却原子気体などの孤立量子系におけるエントロピー増大則に関する研究も行った。具体的には、どんなエントロピーの表式がエントロピー増大則を満たすか、という問題に取り組んだ。結果として、熱力学の基本的な関係式を全て満たす、孤立量子系のエントロピーの表式の一つを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度行った研究の以前には、Lee-Yangの量子クラスター展開法を用いてBCS極限を導出する方法は知られていなかった。本年度の研究は、ユニタリティ極限におけるBEC-BCSクロスオーバーの問題を解明するための準備研究と位置付けることができ、おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
Lee-Yangの量子クラスター展開法を用いて、BEC-BCSクロスオーバーのユニタリー極限の解析を行う。また、三体系、四体系の数値計算の結果を用いて、少数系の自由度が多体系の自由度に与える影響を調べる。それと併行して、二次元に閉じ込められたヘリウム3の気液相転移の研究も行う。
|