研究課題
本研究は大腸癌で恒常的に活性化しているWnt/β-cateninシグナルにおけるmiR-145の役割を解明すること、およびmiRNA補充療法に適したmiR-145の化学修飾の確立を目的としている。これまでの研究でmiR-145が大腸癌で顕著に発現低下しており、miR-145を大腸癌細胞に導入するとβ-cateninの核内移行が阻害され、細胞増殖を抑制することを明らかにした。このmiR-145によるβ-cateninの核内移行抑制メカニズムをδ-cateninという分子に着目してさらに解明することを中心に研究計画を遂行した。具体的には1)Wnt/β-cateninシグナルにおけるmiR-145/δ-cateninの機能解析、2)δ-cateninがmiR-145の標的遺伝子であることの証明、3)δ-cateninの機能解析、4)AntagomiR-145を用いたrescue実験による1)-3)のデータ検証を行った。結果、miR-145はδ-cateninを直接の標的遺伝子とし、δ-catenin/PAK4の相互作用を介してβ-cateninの核内移行を制御していることが明らかとなった。miR-145の大腸上皮細胞における発現低下がWnt/β-cateninシグナルの恒常的活性化、adenoma-carcinoma sequenceの進行に深く関与している可能性が示された。次にmiR-145の臨床応用に向けて、化学修飾を施した合成miR-145の作成とその機能解析およびヌクレース耐性獲得の有無を検証した。結果、Ambion社製のmiR-145と比較すると、大腸癌細胞増殖抑制能、標的遺伝子発現抑制能はやや減弱したものであることがわかった。また今回作成した合成miR-145はヌクレース耐性能を有しないことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
本年度研究計画の約2/3を達成しているため②とした。計画後半の化学修飾を施した合成miR-145の作成とその機能解析に関しては、作成した6種の合成miR-145に期待するヌクレース耐性能が付与されなかったため、化学修飾および核酸の構造改変の方法を再検討中である。
標的遺伝子制御能を失わずかつヌクレース耐性能を獲得させた合成miR-145を完成させ、in vitroにおけるWnt/6-cateninシグナルを標的としたmiR-145の有用性の検討へとすすむ。miR-145にヌクレース耐性を付加するために新たにLNA修飾を行うこととする。また、このLNA修飾mR-145の機能解析(in vitro)を行い、修飾によって性質・機能が損なわれていないことを確認する。
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