研究課題/領域番号 |
13J00648
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
曽布川 英人 日本大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | プロトテカ性乳房炎 / PCR-HRM / 迅速診断 / 分子疫学調査 |
研究概要 |
初年度は、PCR法を用いたプロトテカ性乳房炎の迅速診断法の確立およびプロトテカの分子疫学調査を計画した。現在までの本藻類検出およびGenotype鑑別法では、分離培養から同定までに長時間要し、多検体処理に不向きであること、コストなどが課題であった。そこで、18S Ribosomal DNAシークエンスから、既存の判別領域と異なる位置にプロトテカ特異的プライマーを設計した。続いて、細菌等の同定において迅速かつ簡便に遺伝子多型鑑別を行えるHigh Resoluhon Melting real-time PCR (PCR-HRM)法を、本藻類Genotype鑑別に適用し、その有用性を検討した。PC-HRM解析により、各Genotypeはそれぞれ異なる熱解離曲線を示した。また、蛍光強度50%における平均解離温度に有意差が認められた(0.4℃、p<0.01)。以上の結果から、PCR-HRMは、塩基配列の相違およびGC含量を明確に反映し、Genotype鑑別に有用であることが示唆された。また、従来法に比較し、約3時間での鑑別が可能、手技の簡便さおよび多検体処理が可能であることから、迅速診断法としての有用性が示唆された。 分子疫学調査においては、環境サンプル(糞便、飲料水、牛床、ミルカー、他動物糞便など)を18農家から計1379検体、感染牛乳汁を約40農家から160検体の採取、分離および遺伝子解析を完了した。また、愛知県内農場(約300件)のバルクサンプルを採取、感染牛発生農家のスクリーニングを完了した。乳汁サンプルのほとんどが病原遺伝子型とされるGenotype 2と同定された。一方、環境サンプルは非病原遺伝子型とされるGenotype 1が約70%、Gemtype 2が約30%と同定された。環境サンプルを含めた大規模疫学調査は、世界的に初であり、感染源の推定に重要な結果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、PCR法を用いたプロトテカの迅速診断法の確立を終え、分離株に対する鑑別の有用性を確認した。また、分子疫学調査において、目標検体数以上の採材および遺伝子解析について終了いるため、作成した研究計画に準じた進行ができていると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、現在までの採材データのまとめを行う。各サンプルの分離率および遺伝子型分類から、感染源となり得るサンプルに対するオッズ比などを算出し、感染源の推定を行う。感染牛より分離された株については、当初の計画通りに感受性試験を行い、使用可能な薬剤の選定を行っていく。
|